松田卓也『2045年問題』

2045年問題

2045年問題
著者:松田卓也
価格:864円(税込、送料込)
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 今日は、東大で人工知能の研究者である松尾豊准教授を取材。
 いつも思うことだが、最先端の研究者へのインタビューというのは個人教授を受けるようなもので、なんとも贅沢なことである。「仕事を通じていろんな勉強ができること」が、ライターの醍醐味の一つだ。人工知能に関する本を立て続けに読むなんて、私にとっては仕事でなければあり得ないし……。


 行き帰りの電車で、松田卓也『2045年問題――コンピュータが人類を超える日』(廣済堂新書/864円)を読了。
 
 レイ・カーツワイルが提唱している、「2045年に人工知能は技術的特異点(シンギュラリティ)に達し、人類全体の知能をはるかに超える。それ以後の未来は予測不可能となる」との説をめぐる、いわゆる「2045年問題」。それを中心に、人工知能と人類の未来を大局的に展望した本。著者は宇宙物理学者で、神戸大学名誉教授。

 悪い本ではないのだが、『人工知能は人間を超えるか』(松尾豊)、『AIの衝撃』(小林雅一)という2冊の優れた概説書を読んだあとだと、わりを食って見劣りがする。著者のSF的空想で水増しされている点が目立ち、内容が薄いし。

 あと、話が横道にそれるところも多い。
 たとえば、著者がいろんな音声入力ソフトを使ってみた経緯を延々と書いているくだりがあって、「ここ、いらんやろ」と思った。また、『ターミネーター』『マトリックス』『攻殻機動隊』など、人工知能が描かれた映画のあらすじを延々と紹介しているくだりもあって、やはり「ここ、いらんやろ」と思った。

 人工知能の普及による失業者の大量発生とか、悲観的な話に妙にウエートが置かれているのも、本書の特徴だ。
 傾聴に値する卓見もあるので、駄本とは言わないが……。

小林雅一『AIの衝撃』

AIの衝撃 人工知能は人類の敵か

AIの衝撃 人工知能は人類の敵か
著者:小林雅一
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 小林雅一著『AIの衝撃――人工知能は人類の敵か』(講談社現代新書/864円)読了。仕事の資料として。

 昨日読んだ『人工知能は人間を超えるか』(松尾豊)の類書。AI――人工知能の概説書である。
 面白いのは、2つの本が同じテーマを扱い、同時期に刊行されたにもかかわらず、内容が別物になっているところ。人工知能の歴史を振り返った部分などに一部重複もあるが、紹介されるエピソードなどはほとんど重なっていないのだ。

 松尾豊の本が研究者目線であるのに対し、本書はジャーナリスティックな目線から書かれているという、アプローチの違いによるものだろう。著者の小林はKDDI総研リサーチフェロー/情報セキュリティ大学院大学准教授だが、雑誌記者、新聞記者の経験もある人だから。

 著者は私見を排し、データやエピソードを集めて「事実をして語らしむ」やり方で、中立・客観的視点からAIの「いま」と「これから」に迫っていく。膨大な事実を整理する手際が鮮やかで、じつによくまとまっている。

 本書と『人工知能は人間を超えるか』を併読することで、AIについてバランスのとれた鳥瞰図が得られるだろう。

 とくに面白かったのは、最後の第4章「人間の存在価値が問われる時代」。
 従来、「単純作業は機械のほうが得意でも、創造的な仕事は人間にしかできない」と考えられてきたが、AIの急速な進歩でその点もあやしくなってきた。
 バッハそっくりの曲を短時間で大量に作れるコンピュータ・プログラムが登場するなど、AIがある種の創造性を発揮するようになってきたのだ。この傾向が今後どんどん強まっていくとしたら、そもそも「創造性」とは何か? そして、人間の存在価値とは? ……という問題提起がなされる章で、知的興奮に富む。

松尾豊『人工知能は人間を超えるか』ほか

人工知能は人間を超えるか

人工知能は人間を超えるか
著者:松尾豊
価格:1,512円(税込、送料込)
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 松尾豊著『人工知能は人間を超えるか――ディープラーニングの先にあるもの』(角川EPUB選書/1512円)、松尾豊・塩野誠著『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」 』(KADOKAWA/1512円)を読了。仕事の資料として。

 松尾豊・東大准教授は、まだ若い(1975年生まれ)のに、日本を代表する人工知能研究者の1人と目されている方である。
 『人工知能は人間を超えるか』は、人工知能の概説書。人工知能の歴史と現状、そして「ディープラーニング」というブレークスルーによって今後人工知能がどう社会を変えていくかの展望が、手際よくまとめられている。

 全7章のうちの2章~4章が、人工知能の歴史の概説に充てられている。ここは、著者も「読み切るのは、少し骨が折れるかもしれない」と書いているとおり、私のような文系人間にはやや難しい。しかし、ここを読んでおくことによって、そのあとの章がすんなり理解できるように作られている。

 人工知能についての非常に優れた概説書・入門書であり、知的興奮にも満ちている。巧みな喩え話をちりばめるなど、わかりやすさへの工夫が随所に凝らされている。私のようなド素人にも人工知能の概略が理解できるのはスゴイ。

 もう一つの『東大准教授に教わる~ 』は、実業家(株式会社経営共創基盤のマネージングディレクター・パートナー)の塩野誠との対談形式。
 タイトルの印象から、読者の多くはわかりやすい入門書を期待するだろう。だが、じつはまったく入門書的ではない本だ。対談の中身は半ば哲学的といってよいものだし、話があちこちに飛んでまとまりに欠ける。『人工知能は人間を超えるか』がよく整理された構成であるのとは対照的。

 私は先に『人工知能は人間を超えるか』を読んだので、そこで得た知識によって『東大准教授に教わる~』も面白く読めたが、こっちだけ単独で読んだらわかりにくいと思う。
 部分的には目からウロコの話や卓見もたくさんあるのだが、入門書としてはオススメできない。「人工知能をめぐる知的雑談集」といった趣の本である。

 というわけで、『人工知能は人間を超えるか』のほうをオススメ。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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