『ボイス』

ボイス [DVD]ボイス [DVD]
(2003/10/16)
ハ・ジウォンキム・ユミ

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 『リング』は“呪いのビデオ”の物語だったが、こちらは“呪いの携帯電話”の物語。電話機そのものではなく、番号に呪いがかかっているという設定がうまい。その番号を使った者は次々に自殺したり、謎の事故死を遂げたりする。ヒロインがその番号を使う羽目になり、やがて得体の知れない恐怖の影が……というストーリー。『リング』の主人公は新聞記者だったが、こちらのヒロインは雑誌記者である。

 というと、「なんだ、『リング』の二番煎じか」と思う向きもあろう。
 たしかに、基本設定のみならず、作品のあちこちに映画版『リング』からの影響が見える。しかし、パクリだからといって元ネタよりクオリティーが低いとはかぎらない。青は藍より出でて藍より青し。私は、この『ボイス』は『リング』を超えていると思う。怖さ・脚本の質・出演者の演技などすべての面で…。

 とにかく怖い。映画版『リング』では2回くらいしかゾッとしなかった私だが、この『ボイス』は計20回くらいゾゾ~ッとする場面がある。この映画の監督(アン・ビョンギ)と脚本家は、観客を怖がらせるツボを心得ている。

 ただし、怖がらせ方はごくごくオーソドックス。「お、そろそろくるな」というところできっちり怖い場面がくるのだ。
 ジェットコースターには誰が乗っても怖いように、誰にとっても怖いという“ツボ”がある。たとえば、マンションの10階に住んでいる人が夜中にカーテンを開けたとき、血まみれの女が窓からのぞいていたら、誰だって叫び声をあげるだろう。そういう“怖さのツボ”を刺激する場面が、随所に用意されている。これでもか、とばかりに…。

 『リング』のみならず、古今のホラー映画の絶妙なパクリがたくさん盛りこまれている。
 たとえば、かわいい少女に“何か”が取り憑き、少女がしだいに悪魔じみていくという展開は、いうまでもなく『エクソシスト』のパクリだ。しかし、パクリであることがわかってもなおかつ感心させられるほど、芸のあるパクリ方をしている。また、その“呪われた少女”を演ずる子役(ウン・ソウ)の演技が、じつに素晴らしい。「韓国のリンダ・ブレア」と呼びたい天才子役ぶり。

 後半、その携帯番号がなぜ呪いの番号になったのかの謎解きがされていくのだが、その謎解き部分もとてもよく出来ている。二重のどんでん返しが仕掛けられていて、そのへんの展開のうまさも『リング』より上だ。ネタバレになるのでくわしくは書けないが、韓国映画らしい「恨(ハン)」と「愛憎」の物語になっているのだ。

 怖がらせ方や物語の基本構造は昔の怪談のように古典的なのだが、全体の雰囲気は洗練されたモダン・ホラー。エディプス・コンプレックスや人工授精などという現代的な道具立てが、巧みに盛りこまれている。

 ヒロインを演ずるハ・ジウォンは松たか子と桜井幸子を足して2で割ったような顔で、準ヒロイン(ヒロインの親友役)を演ずるキム・ユミは鷲尾いさ子を細面にした感じ。2人ともすこぶる魅力的である。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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