ほりのぶゆき『いちびりの園』


いちびりの園 (ビッグコミックススペシャル)いちびりの園 (ビッグコミックススペシャル)
(2003/04)
ほり のぶゆき

商品詳細を見る


 私のひいきのギャグ・マンガ家ほりのぶゆきの、これまで単行本化されていなかった初期作品を集めた『いちびりの園』(小学館/905円)が発売された。
 『ビッグコミックスピリッツ』に連載された『江戸むらさき特急』でメジャー・ブレイクする以前、『シンバット』とか『まんがくらぶ』などのB級誌に掲載された作品をおもに集めている。いちばん古いのはじつに89年の作品で、新しいものでも95年の作品。約10年の時を経て蘇った幻の傑作集である。

 私は『ロッキング・オン』の「渋松対談」に添えられていたほりの4コマ「タテノリ」のころからのファンであって、ほりは初期のほうがいまよりも面白かったと思っている(いまもまだ枯れてはいないが)。であるからして、当然この『いちびりの園』もたいへん面白く読んだ。

 ギャグ・マンガの面白さを言葉で説明するというのもむなしい行為だが、これは、ねじれまくったギャグ・センスが炸裂するパロディ小品集である。
 パロディといっても、高尚な批評精神とかウイットとかは薬にしたくもなく、ものすごく下品でくだらない。ダジャレ・タイトルを最初に思いついて、そこから無理やりタイトルに合わせたパロディ・マンガを作ったような感じ。たとえばどういうタイトルかというと……。

「ど根性山椒魚」「宇宙戦艦ポチョムキン」「フリオ番長」(注:フリオ・イグレシアスが番長)「ロミオ対ジュリエット」「まひるヶ丘の暗黒大元帥」「手ながおじさん」「昼下がりのジョージ」(注:主人公は安部譲二)「つばき姫」「番長皿屋敷」「俺たちの荼毘(だび)」「狼市民ケーン」「島」(注:ヒッチコックの『鳥』のパロディ。島耕作から嶋大輔まで、あらゆる「島」がある日突然人々を襲い始める)

 ……とまあ、このようにくだらない。唐沢俊一の「裏モノ日記」のダジャレ・タイトルだってもっとひねりがあるぞ、という感じの小学生レベルのダジャレである。
 しかし、くだらないけれど、これが意外なほど笑えるのだ。「むかしむかしそれは美しい そして何かというとすぐツバをはくお姫様がおられました」というナレーションにつづいて、「つばき姫」が「ペっ!」とつばを吐く場面を見るだけでもう爆笑。「手ながおじさん」が「自慢の長い手を使い街中のええケツを触りまくった」というネームを見るだけでまた爆笑。「フリオ番長」が「んナタリ~!」と突然歌い出す場面でもうゲラゲラゲラ。1人でウケまくってしまった。

 私は、ほりのぶゆきの作品では『最終戦争ちょんまげどん』がいちばん好きだけれど、この『いちびりの園』の破天荒な若さのパワーも捨てがたい。4コマもいいけど、たまにはこういうふつうのギャグもまた描いてほしいものだ。
関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
30位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
22位
アクセスランキングを見る>>