ゲッツ板谷『板谷バカ三代』

板谷バカ三代 (角川文庫)板谷バカ三代 (角川文庫)
(2003/08)
ゲッツ板谷

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  ゲッツ板谷著『板谷バカ三代』(角川文庫/590円)は、1冊で50回くらい笑える本。コラム集でこんなに笑ったのは、小田嶋隆初期の傑作『我が心はICにあらず』以来だ。

 小田嶋隆のコラムにはクールな知性に裏打ちされたシニカルな笑いがあるが、ゲッツ板谷の笑いはもっとストレートでパワフル。
 ありていに言って、「知性の笑い」ではない「バカの面白さ」。破天荒なパワーに満ちていた初期の椎名誠を彷彿とさせる。じっさい、「シーナからゲッツに乗り換えた」という本好きが、最近少なくないようだ。

 『板谷バカ三代』は、タイトルのとおり、自分の家族をネタにしたコラム集。板谷氏の父・祖母・弟の三人を中心とした板谷家の人々のバカぶり(と、私が書くとものすごく失礼な感じだが、著者自身がそう書いているのだ。父・祖母・弟は「バカのゴールデンライン」であり「核兵器級のバカ」だと…)があまりにブッ飛んでいて笑えてしまうという、前代未聞の一冊だ。

 例を挙げよう。

バアさんはオレの友達が遊びに来たりすると、サイ牛と命名したサイダーと牛乳を混ぜたモノを必ず出してくる。一度、「そんなモノは出さないでくれ!」と本気で注意したら、ネーミングを「牛ダー」に変えてまた出してきた。
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 なんの気なしに2人の履歴書をのぞき込んでみたところ、趣味の欄にベッチョは「珍味」、セージは「ボクをグイグイとリードしてくれる人」という文字を書き込んでいた。さらに、扶養家族の欄には、ベッチョが「いいと思う」、セージは「7人家族。それと犬が1個います」と記入していた……。

 


 ちなみに、「セージ」とは板谷氏の弟、「ベッチョ」はセージの友人だ。

 板谷氏のコラムには、独特の破天荒な比喩表現がちりばめられていて、それだけでもおかしい。「頭蓋骨にヒビが入るほどマズイ」とか、「ここでもセージが昆虫のような行動に出たのである」とか。
 また、随所に掲載された家族の写真と、そこにつけられたキャプションも笑える。たとえば――。


花見で泥酔し、木に登るセージ。『カレーに福神漬け』レベルでマッチするんだな、桜とバカって…
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 彼女と主食の駄菓子を楽しむセージ。奴の1ヶ月の駄菓子代は7万円前後

 


 ちなみに、板谷氏は私と同じく東京・立川市在住。しかも、住んでる町も丁目も同じの超ご近所さんだ。コラムに登場する市内のあれこれをよく知っているぶん、私には2倍笑える本なのである。

 私は単行本ももっているのだが、文庫オリジナルの企画ページ「アド街ック地獄in立川」が読みたかったので、文庫も購入。
 ちなみに、単行本の帯の惹句は、「オール完全実話!! 立川の最強バカ一家物語」という強烈なものであった。

 文庫版には、よしもとばなな・矢井田瞳・ピエール瀧の三人が解説を寄せている。ゴージャス!
 
 ご近所さんなので、立川の〝ナイスなスポット〟を紹介する「アド街ック地獄in立川」が、私にはすっごく笑える。なにしろ、登場するスポットときたら、「第六天神社」(魔王が住んでいる)とか「だんごの美好」とか「第一デパート」とか、「Hanako」の立川特集には決して登場しない激レア・ヤバめスポットばかりなのだ。

 立川市民は必読! あ、立川市民でなくても笑えますよ。



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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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