日本人に肩こりが多いわけ

 日本は、国民の8割が肩こりを感じている(厚労省調べ)という「肩こり大国」である。それに対し、諸外国には「肩こり」にあたる言葉すらない国が多く、肩こりに悩んでいる人もほとんどいない(らしい)のである。

 「肩こりは……(約5秒の間)……日本人にしかない」
 へえ、へえ、へえ、へえ。

 だから、アメリカ映画やフランス映画で、肩叩きや肩もみをしてやる場面にはほとんどお目にかからない。
 私が知っている唯一の例外は、マーティン・スコセッシ監督の『アフター・アワーズ』という映画。これにはアメリカ映画のくせに、「疲れたろう」とか言って肩をもんでやる場面が出てくる。

 ではなぜ、諸外国にはほとんどない(らしい)肩こりが、日本人にはこれほど多いのか?
 一つの説として言われているのは、「日本人は肩という部位になぜか強いこだわりをもっており、肩を意識しすぎるから、それが肩こりとなって現れる」というもの。

 たとえば、日常使われている慣用句の中に、肩にまつわるものが非常に多い。「肩を並べる」「肩肘を張る」「肩の荷がおりる」「肩を落とす」「肩をもつ」などなど。
 しかも特徴的なことは、マイナスイメージの言葉が多いということだ。あたかも、日本人にとって肩は、人間関係の緊張など負の感情が表れるところだ、とでもいうように……。

 そうした肩へのネガティブなこだわりが、肩こりとなって現れるのではないか、というのである。つまり、「病は気から」は肩こりについても言えるらしいのだ。

 ではなぜ、日本人はそんなに肩にこだわるようになったか? その淵源は、仏教説話にあったと考えられる。

 仏教説話に、人の肩に宿る神の話がある。人の誕生と「倶(とも)に生ずる」ため、「倶生神(くしょうじん)」と呼ばれる。

 生まれたときから両肩にそれぞれ小さな神様が載っていて、その人間がやったよい行い・悪い行いを克明に記録していく。そして、倶生神はその記録を、死後に閻魔大王に報告するのだという。

 倶生神のうち、右肩に載っているのは女神で、その人の悪業を記録する係。左肩に乗っているのは男神で、善業を記録する係だとか(異説もある)。

 たしかに、こんな説話を聞かされて育った日には、肩にのしかかる重荷を意識せずにはおれまい。いまどきの日本人は倶生神なんてほとんど知らないだろうが、心の隅に名残があるのだろう。

 もっとも、仏教説話が元なのだとしたら、インドや中国、韓国の肩こり事情はどうなのかという疑問も湧く。そのへんの考察は私の手に余るので、誰か知っていたら教えてください。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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