離婚をめぐる名言

 離婚したタレントの雛形あきこが、破局を振り返ってテレビ番組でこう語ったそうである。

「失敗じゃなかったよね、と2人で話しました。失敗じゃなかったと思います」

「離婚したけれど、失敗じゃなかった」――これはなかなか切ない、巧まざる名言ではないだろうか。
 
 「失敗」でないとしたら、なんだろう? そう、たとえば「ミスキャスト」と表現しようか。
 フランシス・コッポラの映画『ランブルフィッシュ』(1983)に、そんなセリフがあった。

「父さんと母さんはミスキャストだったんだ」

 ミスキャスト――これは離婚にかぎらず、男女の別れをシュガーコーティングする表現としてはなかなか卓抜ではないだろうか。どちらが悪いわけでもない。どちらが被害者というわけでもない。ただミスキャストだっただけ、と……。

 「そうね。たぶん、あなたと私はミスキャストだったのよ」

 映画のワンシーンのような「粋な別れ」を演出するときに、ぜひ使ってみていただきたい。

 *** *** *** *** 

 「ハリウッドでは、結婚生活よりも映画の撮影のほうが長くつづくこともあるのよ」と言ったのは、バーバラ・ストイサンドだった。

 そのハリウッドにあっては「長つづきしたほう」なのが、トム・クルーズとニコール・キッドマンという美男美女カップルであった。
 2人は1990年に結婚し、2001年に離婚。その際にニコールが笑顔で言い放った痛烈な捨てゼリフは、語りぐさになっている。
 いわく――。

「これでやっと(高い)ヒールが履けるわ」
(Now I can wear heels.)


 もちろん、トム・クルーズの身長の低さを皮肉った言葉である。 
 このセリフによって、ニコールは離婚経験のある世の女性たちを一気に味方につけ、すっかり株をあげた。

 *** *** *** *** 

 女優の若尾文子が1968年に離婚したとき、記者会見でしつこく「離婚の原因」を聞く記者に向かって、ピシャリとこう言ったという。

「どうしても原因を聞きたいのなら、2日くらい家に泊まりこむつもりで取材にきていただきたいわ」

「なぜ離婚したのか?」、あるいは「なぜ結婚するのか?」――こんな問いに、ほんとうは一言で答えられるはずがないのだ。にもかかわらず芸能人は、それを一言で、しかもテレビ映えのする派手な言葉で答えるよう要求される。
 若尾文子は、業界のそうした不毛な慣習に、優雅に唾を吐いてみせたのである。

 *** *** *** *** 

 五月みどりは、かつて20歳年下の歌手・立花淳一と再婚したが、立花の浮気を理由に離婚した。その際、「誤解だ」を連発する立花を、記者会見で次のようにバッサリと斬って捨てた。

「誤解だなんて……。男らしくないわね。あたしは誤解で離婚するほど甘くは生きてこなかった」

 生きざまがにじむ、凄みのある言葉といえよう。

 ちなみに、五月のこの離婚に際し、当時出演していたワイドショーで、「浮気は男の甲斐性というけど、甲斐性のない男の浮気なんて……」とグサリとドスで刺すようなコメントをしたのが、冨司純子であった。

 *** *** *** *** 

 タレントの高見恭子は、かつて離婚した際、記者会見でこう語った。

「楽しいこともたくさんあった。でも、幸せはクシャミをしている間にどこかへ飛んでいってしまった。……いまはただ、じっと傷口がふさがるのを待つだけです」

 これもまた、心にしみる巧まざる名言である。ちなみに、いまの高見恭子は馳浩夫人。

 *** *** *** *** 
 
 あのデヴィ夫人が、テレビ番組のなかでこんなふうに語ったことがある。

「娘には最低2回は結婚して欲しいと思っています。だって、最初の結婚なんてミステイクに決まってますもの」

 ううむ…。
 いかにもデヴィ夫人のキャラ全開で面白い言葉だけれど、同意はしにくいなあ(笑)。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。56歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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