『DAYS JAPAN』について

もう一つの『DAYS JAPAN』(2003年12月20日記)
『デイズ・ジャパン(DAYS JAPAN)』という雑誌を覚えている人は、どれくらいいるだろうか?

 硬派のヴィジュアル・ジャーナリズム誌として、1988年に講談社から鳴り物入りで創刊されながら、わずか1年足らずで謎の廃刊を遂げた〝幻の雑誌〟である。

 いい雑誌だった。
 講談社という大出版社が発刊しているとは思えないほど、反権力姿勢を全面に打ち出し、創刊号でいきなり原発問題に鋭く切り込んだ巻頭特集を組んだりした。

 寄稿者にも、藤原新也、広河隆一、宮内勝典、広瀬隆など、当時脂が乗り切っていた作家やジャーナリスト、フォトジャーナリストを積極的に起用し、読み応えのある記事が多かった。

 同誌の担当役員であった名編集者・内田勝(『少年マガジン』を初めて100万部雑誌に育て上げた人)の回想録『奇の発想』(三五館)によれば、同誌は「大衆をパトロンとした〝欲望充足のジャーナリズム〟ではなく、未来の地球の生きとし生けるものへの〝愛のジャーナリズム〟」「〝文明論ジャーナリズム〟」を目指していたという。すごいではないか。

 『デイズ・ジャパン』が廃刊せずにつづいていたら、いまの日本の雑誌ジャーナリズムは、もう少しマシになっていたのではないかと思う。

 創刊翌年の突然の廃刊は、記事に書かれた某有名タレントの講演料に事実誤認があったから、という理由によるものだった。
 しかし、これはいかにも不自然で、「真の廃刊理由」をめぐってさまざまな憶測を呼んだ。「同誌の反権力姿勢が我が国のエスタブリッシュメントの逆鱗に触れたのだろう」ともいわれた。

 少し前に、内田勝さんにお会いする機会があった。その際、「『デイズ・ジャパン』の廃刊理由は、ホントはなんだったんですか?」と聞いてみたが、ただ苦笑するのみで教えてくださらなかった。胸に秘めて「墓場までもっていく」たぐいの事柄なのであろう。

 前置きが長くなった。

 私はこの夏、『デイズ・ジャパン』のメイン・ライターの1人でもあったフォト・ジャーナリストの広河隆一氏を取材した。

 その際、氏は現在の日本の雑誌ジャーナリズムへの深い幻滅を吐露され、もう自分で雑誌を作るしかないと思っている、とも語られた。

 そしてさきごろ、広河事務所より、その新雑誌の創刊案内が届いた。「広河隆一 責任編集」で来年3月に創刊予定だというその雑誌の名は、『DAYS JAPAN』。

 そう、広河氏は、かつてわずか1年で消えた伝説の名誌の名を、新雑誌にあえて冠されたのである。「権力に媚びない本格派フォト・ジャーナリズムの火を、もう一度日本にともそう」という深い決意が、そこには見て取れる。

 かつての『デイズ・ジャパン』は、大出版社の潤沢な資金力があったからこそ作れた雑誌であり、個人中心の雑誌では資金面で相当の苦難があると思う。

 年間予約購読者を募る案内パンフには、1口10万円からの「新雑誌募金」(=資金援助)を求める文章も添えられていた。
 私はさっそく年間予約購読を申し込んだものの、あいにく、ポンと10万円を募金するほどの金銭的余裕はない。
 
 お金持ちの方々はどうか資金援助をしてあげてほしい。
 我が国一流の志あるフォト・ジャーナリストが集結した雑誌となることは、請け合う。

『DAYS JAPAN』創刊号(2004年3月17日記)
 年間購読した『DAYS JAPAN』の創刊号が、今日メール便で届いた。
「広河隆一責任編集/世界を視るフォトジャーナリズム月刊誌」である。
 
 創刊号の特集は「大義なき戦争」。むろん、米国によるイラク爆撃・占領のことである。
 ほか、ハンセン病元患者たちを取材したフォト・ドキュメンタリーや、夫による妻へのDVをテーマにしたリポート、ジェイムズ・ナクトウェイによる「チェチェンの子どもたち」などが柱になっている。

 まだ文章まで読んでいないのだが、写真を見るだけでもすごい。一枚一枚の写真の重みが圧倒的である。

 表紙は、イラク爆撃で亡くなった少女を抱き上げる父親の写真。ページをめくると、広河隆一さんによる「創刊のことば」の隣に、その写真がもう一度登場する。
 ただし、そちらは表紙写真と違ってトリミングされておらず、全体像が明らかになる。少女の脚は、爆弾に吹き飛ばされてグシャグシャになっているのだ。胸がつまる。

その写真のキャプションにはこうある。
「米英軍は大量のクラスター爆弾をイラク南部の都市バスラに投下した。市内での負傷者、犠牲者の圧倒的多数は、この少女のように一般市民だった。2003年3月22日」

 そのほかすごいと思ったのは、セバスチャン・サルガドの写真。「サルガドの世界」という連載になっていて、その第1回「砂漠に消えた湖で」は、西アフリカ・マリ共和国を襲った飢饉(1985年)の模様を撮った写真で構成されている。
 干上がった湖をさまよう難民の母子の姿をとらえた写真など、それ自体が見事な絵画のようだ。

 その連載に寄せたエッセイで、作家・池澤夏樹は言う。
「サルガドの写真の中では美しさと、過酷や悲惨という二つの異質な力が衝突している」
 まことにしかり。悲惨な現実を刻みつけた写真でありながら、峻厳な美しさに満ちている。 

 また、フォトジャーナリスト野町和嘉の写真と文で構成された「サハラ」も素晴らしい。
 とくに、モロッコの山中で暮らすベルベル族の女性が赤子に乳を与えながら静かに微笑む写真。母性というものをこれほど美しくとらえた写真を、私はほかに知らない。

 ただ、64ページで820円のこの雑誌を、採算ベースにのせるのはやはり難しいかもしれない。広告もほとんど入っていないし。
 これ1冊で、クッダラナイ既成の写真週刊誌10冊分以上の価値はあると思うのだが……。 
関連記事

トラックバック

コメント

廃刊の理由
はじめまして。

たまたま、別件でDay Japanの資料を調べていたら、この記事を見つけましたので、投稿させて頂きます。
廃刊の廃刊の理由は、Shaul Eisenberg(ショール・アイゼンベルグ)氏を初めてメディアで取り上げたからではないでしょうか。
記事のタイトルは「占領下日本が生んだ謎のユダヤ人政商」広河隆一著です。
御存知かとは思いますが、彼こそキッシンジャーのボスで、戦後の日米関係の陰の主役かと思います。
私がモスクワにいた時に、元ソ連の外交官が「東のアーマンド・ハマー、西のアイゼンベルグ」が黒幕の中の黒幕と言っておりました。
ご興味がございましたら、その記事のPDFを送付致します。

申し遅れましたが、私の自己紹介は以下を参照してください。
http://www.facebook.com/profile.php?id=1373136392&sk=info

突然のメール失礼いたしました。



管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2009-03-09│12:49 |
  • [edit]

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
30位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
24位
アクセスランキングを見る>>