子どもの名前の話

 人名用漢字を一挙に578字も増やそうとする見直し案が、11日に公表された。「苺」「遥」「煌」「牙」などが使用可能になって名づけの選択肢が広がった一方、「糞」「呪」「屍」「癌」などというネガティヴなイメージの字が多く含まれ、話題を呼んでいる。

 我が家には小5の娘と小1の息子がいるからよくわかるが、いまどきの子どもには「うへー」と言いたくなるような奇天烈な名前の子が少なくない。もしも見直し案がいまのまま成立したら、「癌子ちゃん」も「呪怨くん」も必ずや登場するであろう。

 ちなみに、うちの子の名前は「夏海」と「光」というごくシンプルなものである。決めたのは2人とも私。命名にあたって考えたのは、「電話で名前を説明する際に、一発でわかってもらえる名前」にしようということだった。
 「政之」というありふれた名前の私でさえ、電話口での説明に手間取ることがある。こんなふうに……。

「えーと、政治の政に、ひらがなの『え』に似た之です」
「ひらがなの『え』?」
「あのー、『これ』とも読む字ですね」
「『これ』…ですか?」
「お墓に『誰それの墓』って書いてある、あの『の』の字です」
 
 ましてや、難読文字や突拍子もない読み方をさせる名前をつけられたら、社会に出てから何かと難儀するにちがいない。だから「わかりやすい名前にしよう」と決めていたのだ。
 2人合わせて「光る夏の海」。そんなイメージも気に入っている。

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 子どものころ、私は「佳子」とか「佳江」という名前の女性がカワイソウに思えて仕方なかった。
 なぜなら、絵画コンクールや作文コンクールのたぐいでは、佳作は「優秀作」や「一等・二等」になれなかった作品がもらうものだから。「佳」という字には、「いちばん優れているわけではない」という意味があるのだと思っていたのだ。

 私の身近にはいなかったが、姉が「優子」で妹が「佳子」という姉妹がいたとしたら、妹は「アタシはお姉ちゃんよりランクが下なの?」と、その名前に傷つくのではないだろうか。

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 亡くなった私の父は、酒に酔うと、幼かった私のことを「アキちゃん、アキちゃん」と呼んで、頭をなでた。
 
 「アキちゃん」とはいったいなんのことだろう? 不思議に思ってあるとき尋ねてみて、理由がわかった。

 私が生まれて名前を決める際、父は私に「明人(あきひと)」と名づけたかったのだそうだ。
 ところが、祖父が「皇太子様と同じ名前をつけるなんて、畏れ多い」と時代錯誤なことを言って反対し、けっきょく「政之」になったのだとか。

 「皇太子様」とは、むろんいまの天皇のことである。あちらは「昭仁」だけれど。

 もしも「明人」という名前になっていたら、私も物書きになどならず、日焼けした肌に白い歯が輝くような「明るい人」になっていたかもしれない(笑)。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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