鎌田實『がんばらない』『あきらめない』



 鎌田實著『がんばらない』『あきらめない』(集英社)読了。

 いずれも、著者が院長を勤めていた諏訪中央病院での患者たちとのふれあいを綴ったエッセイ集である。正編『がんばらない』は西田敏行主演でテレビドラマ化されたそうだが、あいにく私は未見。

 エッセイの内容は、おおむね次の3種類に分けることができる。

 1.末期ガン患者など、「瀬戸際に生きる命が放つ一瞬の、見事な輝き」をとらえたもの
 2.病院のあり方自体をテーマにした、提言的なもの
 3.著者の亡き父母など、身近な人間の闘病の様子を綴ったもの

 このうち、私は1に属するエッセイに最も強い印象を受けた。ごく普通の市井の人々が、自らの死に向き合う日々の中で見せる崇高な人間性に胸打たれる。

 悪性リンパ腫で亡くなった高校3年生は、最後の外泊で、自分が眠ることになる墓地を見に行き、さばさばとした顔でこう言う。
「母さん安心したよ。俺の行くところを見てきた! 八ヶ岳が見えて、霧が峰、蓼科山に見守られて景色のものすごくよいところだね」(『がんばらない』)

 42歳の若さでガン死した母親は、余命3ヶ月と宣告されながら1年8ヶ月生きたが、その支えとなったのは子を思う心だった。
 「長男の卒業式まで生きたい」「末っ子の推薦入学が決まる秋まで、生きていたい」――そんな思いが彼女の寿命を伸ばしたのだった(『あきらめない』)

 全編をつらぬくテーマは、『雪とパイナップル』と通底している。
 それは、「どんなに淡い希望でも、希望が命を支えている」ということであり、「人はつながりのなかで生きている」ということだ。

 鎌田氏の近著『病院なんか嫌いだ』(集英社新書)もななめ読み。
 こちらは、医療従事者、病院経営者としての長い経験をふまえ、日本の医療・福祉の改革を提言した内容。また、“よい患者になるための心構え”と、“よい医者を選ぶためのポイント”も綴られている。良書だと思う。
 
 今日はこのあと、著者の鎌田氏を取材。その下準備として読んだというわけ。
関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
27位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
22位
アクセスランキングを見る>>