中野晴行『マンガ産業論』

マンガ産業論マンガ産業論
(2004/07/10)
中野 晴行

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 中野晴行著『マンガ産業論』(筑摩書房/1600円)読了。
 日本の戦後マンガ史を、産業としての側面に光を当てて振り返ったもの。

 こういう本は、ありそうでなかった。
 広義の類書としては、吉弘幸介の『マンガの現代史』(丸善ライブラリー)、清水勲の『漫画の歴史』(岩波新書)、村上知彦らの『マンガ伝』(平凡社)などがある。
 ただ、前の2つはマンガの歴史を総花的に扱ったものだし、『マンガ伝』は作家・作品にしぼったマンガ史だ。本書のようなまとまった「マンガ産業史」は、おそらく本邦初であろう。労作であり、資料的価値も高い。

 これは、かなり読者を限定した本である。作家論・作品論を愛読するマニアックなマンガ・ファンであっても、「『産業としてのマンガ』になんて興味がない」という人が大半だろうから……。
 私の場合、マンガ評はライターとしての得意分野の一つだから、職業上の必要もあって面白く読んだ。

 マンガ産業は1960年代後半から急激に膨張し、90年代半ばにピークを迎え、いまは衰退期に入っている。その約40年の興亡の歴史を、著者は過剰な思い入れを排したクールな筆致で綴っていく。

 書名とは裏腹に「論」としての色合いは希薄で、むしろ具体的事実の記述のほうが主である。
 著者もあとがきで認めるとおり、マンガ産業全体を鳥瞰することに主眼を置いているため、個々のテーマについての掘り下げが甘いことは否めない。
 ただ、いろんな要素を手際よく盛り込んだバランスのよい「マンガ産業興亡史」として、非常によくまとまっている本だと思う。

 著者は元銀行員。マンガ評論を手がける者としては異色の経歴である。「産業としてのマンガ」に関する本書のクールな分析には、元銀行員ならではの視点が活きているのかもしれない。

 最後の第3部では、マンガ産業の未来についての展望が語られている。この部分は、熱心なマンガ・ファンならずとも、ビジネス書的興味から楽しめるだろう。

 現在マンガ産業が直面している危機は、出版界全体の危機とも重なり、さらには「パッケージ産業」(「本、CD、DVDなどのパッケージ・コンテンツを売る産業」の意)全体の危機とも重なる。著者が提起する、マンガ産業が孕むさまざまな問題点は、マンガ界だけの問題ではないのだ。 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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