みなもと太郎『レ・ミゼラブル』



 みなもと太郎の『レ・ミゼラブル』(ブッキング/2600円)を再読。
 来週みなもと氏を取材予定なので、その準備を兼ねて。

 いうまでもなく、ヴィクトル・ユゴーの名作のマンガ化である。
 約30年前に発表されたこの作品は、いまなお「文学のマンガ化」の一つの“お手本”として高く評価されている。今回「復刊ドットコム」で復刊希望の声が高まって2度目の復刻がなったのも、その高評価ゆえだろう(しかし、「完全版」とはいえ、コミックスとしては高いね)。

 この作品の何がスゴイかといえば、一つには、感動の大河ドラマ『レ・ミゼラブル』を、吉本新喜劇直系のコテコテ・ギャグマンガに仕立てている点。もう一つには、文庫本で約2500ページにおよぶ大長編を、約400ページのマンガの中に無理なくダイジェストしているところ。
 きちんと笑えるギャグ・マンガになっている。それでいて、ちゃんと感動もできる。ユゴーの原作のストーリーの「コア(核)」、ひいては底流にある精神性のコアを、きっちり押さえているのである。
 
 長編小説からあらすじだけを拾った安直なマンガ化とか、最近よくある『3分でわかる名作のストーリー』などという俗流教養本の対極にある、独創性あふれるマンガ化なのだ。

 みなもと氏といえば、いまなお連載中の“笑えて学べる日本史ギャグ・マンガ”『風雲児たち』で、マンガ家としての評価を決定づけた人である。

 呉智英、関川夏央、糸井重里などの読み巧者もこぞって絶賛した『風雲児たち』は私も大好きなマンガだが、あの作品の原点こそ、この『レ・ミゼラブル』なのである。
 『風雲児たち』が関ヶ原以降の日本史とがっぷり四つに組んだマンガであるように、この『レ・ミゼラブル』はユゴーの文学およびフランス近代史とがっぷり四つに組んだ作品なのだ。そのうえでギャグマンガに仕上げるという離れ業は、ほかの誰にも成し得なかった。

 そして、2つの作品を共通してつらぬいているのは、「ひと握りの英雄ではなく、民衆こそが歴史を動かす」という民衆史観である。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。56歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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