岩明均『ヒストリエ』

  ヒストリエ 2 (2)の画像

 岩明均著『ヒストリエ』の1、2巻(アフタヌーンKC/各533円)を購入。先月末に2巻同時に発売されたものである。
 岩明は、いうまでもなく、あの『寄生獣』の作者。

 『寄生獣』は、いま読み返しても素晴らしい作品だ。
 ホラーなのにスペキュラティヴ(思索的)。たんなるこけおどしの恐怖やスプラッタ描写に終わらず、「人間とは何か?」という根源的な問いを読者に突きつけるその深み。そして、ホラーなのに泣けるその圧倒的感動。1990年代屈指の傑作といえよう。

 しかし、ずば抜けた傑作を創ってしまったクリエイターの多くがそうであるように、『寄生獣』以降、岩明は壁にぶつかっていたように思う(『七夕の国』など、そこそこ面白い作品はあったが)。

 だが、『アフタヌーン』連載中のこの『ヒストリエ』には、『寄生獣』以後の壁をようやく乗り越え、肩の力が抜けた印象がある。これは、岩明のもう一つの代表作になりそうである。

 舞台は紀元前のオリエント。主人公は実在の人物・エウメネス。
 マケドニア王フィリッポス2世、アレクサンダー大王(フィリッポス2世は大王の父)の書記となり、大王の死後は王国の統一保持のため将軍となって戦うが、自らの部隊の裏切りに遭って敵方に引き渡され、処刑された――そういう人物である。

 岩明は想像の翼を広げ、このエウメネスの少年時代を描いている。
 今後、彼が大王の書記となり、やがて自らが将軍に変貌していく過程を追う大河ドラマになるのだろうが、少年時代の物語もたいそう面白い。古代オリエントのいきいきとした描写は興趣尽きないし、英雄譚としての胸躍る面白さも申し分ない。

 それにしても、名前すらほとんど知られていない「アレクサンダー大王の書記」が主人公のマンガが、一級の娯楽作品として成り立つとは……。日本のマンガ文化の豊饒さを、改めて思う。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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