『諸星大二郎自選短編集』


汝、神になれ 鬼になれ (諸星大二郎自選短編集) (集英社文庫―コミック版)汝、神になれ 鬼になれ (諸星大二郎自選短編集) (集英社文庫―コミック版)
(2004/11/18)
諸星 大二郎

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 『諸星大二郎自選短編集』(集英社文庫/「汝、神になれ鬼になれ」と「彼方より」の全2冊/各638円)を購入。

 タイトルどおり、鬼才・諸星が30年におよぶキャリアの中から代表的短編を自ら厳選したもの。過去に読んだことのある作品がほとんどだが、いま手元にないものが多いので、買ってよかった。

 2冊あわせて22編を収めており、マンガ史に残る傑作をいくつも含んでいる。
 たとえば、手塚賞を受賞した実質的デビュー作「生物都市」(1974)や、『妖怪ハンター』シリーズの一作「生命の木」(1976)。この2編は、小学生時代にリアルタイムで読んだときにも衝撃的だったが、いま読み直してもやっぱりすごい。大傑作である。
 2編を描いたとき、諸星はまだ20代。その若さでこれほどの深みと独創性をもつ作品を生むとは……。

 評論家の呉智英は、「生命の木」について、かつて次のように書いた。
 

 しばしばSF作品に描かれるキリスト来日伝説がテーマだが、聖書の謎解きが行われるわけではない。人間が神によって霊を吹き込まれたとするならば、霊を吹き込まれなかった肉だけの人間とは如何なるものなのか。そして、そういう人間にとって救世主キリストはあるのか。こういう、こちら側の人間にとって理解不能ともいえるあちら側の人間を描いたものである。その読後感は、現在の文学作品の最高傑作と称されるものと比較しても、いささかの遜色もない(『現代マンガの全体像』)



 最後の一文にはまったく同感。
 そして、「生物都市」もまた、SF小説の傑作と称されるものと比較しても、「いささかの遜色もない」のである。

 私は、諸星作品では『妖怪ハンター』『暗黒神話』『孔子暗黒伝』『無面目・太公望伝』が好きだ。
 この自選短編集には、『妖怪ハンター』シリーズから計3編が選ばれている。また、『暗黒神話』『孔子暗黒伝』『無面目・太公望伝』の3作はそれぞれ1巻もので、いずれも文庫で入手可能だ。

 もしも諸星作品をまだ読んだことがない人がいたら、以上挙げた計5冊の文庫の一気読みをオススメ。強烈な酩酊感をともなう、めくるめく“異界トリップ”が堪能できるはずだ。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。56歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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