25年目の12月8日

ジョンの魂 ~ミレニアム・エディション~の画像


 25年目の12月8日である。
 12月8日といっても「真珠湾攻撃」ではない。ジョン・レノンがマーク・チャップマンに殺された日だ。あの日、私はまだ16歳だった。

 ビートルズの曲のうち、ジョンが作ってヴォーカルをとったものばかり集めたMDを聴く(「ジュリア」で始まり「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」で終わる)。

 ジョン・レノンは冬が似合う人だったな、と思う。
 コートを着て街を歩くジョンはすぐイメージできるが、Tシャツ一枚とか水着姿のジョンはイメージしにくい。12月8日という命日は、死に方はともかく、季節のうえではジョンに似つかわしい。

 松村雄策さんは、ビートルズをメインにした音楽エッセイの名著『アビイ・ロードからの裏通り』(ちくま文庫)の中で、ジョンについてこう書いている。

【引用始まり】 ---
 ジョンは、ダイヤモンドではなかったのだ。夜店で売っているただのガラス玉だったのだ。だから、初めはなんでもなかった。ガラス玉が輝くためには、その全てに傷をつけるしかなかった。あっちで傷つき、こっちで傷つき、もういたるところが傷だらけになって、その傷が光り輝いているのである。
【引用終わり】 ---

 わずか数行のこの文章は、何万言を費やしたジョン・レノン論より、ジョンというアーティストの「核」に肉薄していると思う。

 念のためにつけ加えれば、松村雄策さんは、渋谷陽一氏らとともに『ロッキング・オン』に創刊当時からかかわってこられた音楽ライター/作家である。
 『苺畑の午前五時』という、ビートルズが好きな人なら鳥肌ものの青春小説(てゆーか「少年小説」)を書いた人でもある。

 また、一時期まではロック・アーティストとしても活躍しておられた。
 セカンド・アルバム『プライヴェイト・アイ』には、「傷だらけのガラス玉」という曲も入っていた。上記の引用文(ちなみに、これは『ジョンの魂』のレビューの一節)がベースになっているとおぼしき曲である。

 『アビイ・ロードからの裏通り』には、ずばり「一九八〇年十二月八日」と題された一文も収められている。もちろん、「あの日」の衝撃を刻んだ文章である。
 それは、次のような忘れがたい一節で終わっていた。

【引用始まり】 ---
 だけど、ひとりではいたくないので、誰か捜して、飲み続けていて、結局何も解らない。当分は、解らないままで、何も無かったふりをして、ずうっと飲み続けよう。
【引用終わり】 ---

 『苺畑の午前五時』の単行本が出たころ(1987年)、松村さんを取材したことがある。
 思えば、あれは私にとって生涯初の「著者インタビュー」だった。さぞかしシドロモドロだったことだろう。汗顔の至りである。

 松村さん、また小説出してください。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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