『ALWAYS 三丁目の夕日』

ALWAYS 三丁目の夕日 o.s.tの画像


 『ALWAYS 三丁目の夕日』を観た。
 ほんとうは『ロード・オブ・ウォー』を観たかったのだけれど、封切り直後のせいか満員だったので。

 公式サイト→ http://www.always3.jp/

 昭和33年の東京を、ある種の「ユートピア」として描き出す映画。
 貧しいけれども未来への希望に満ち、地域共同体の紐帯がしっかりと保たれていた時代。人と人のあたたかい触れ合いが町内に満ちていて、根っからの悪人は一人もいない――そんなユートピアである。

 終戦からまだ13年。焼け野原からはようやく立ち直ったものの、東京オリンピックも高度成長もあともう少し先の話だ。
 しかしそれでも、「今年よりも来年のほうが豊かであるに決まっているし、豊かになるほど幸せになるに決まっているし、科学技術の進歩は人を幸せにするに決まっている」という無邪気な確信が、まだ人々の心に満ちていた。それらの確信は、いまの私たちが一つたりとも持ち得ないものだ。失われたユートピアを愛惜する映画である。

 昭和33年当時を肌で知る年代の人が観たら、たまらなくなつかしいだろう。当時の風俗を再現したディテールがものすごくよくできていて、まるで海洋堂のフィギュアのように細部を愉しむことができる。
 逆に、20代以下の若い人が見たら、この映画の中の東京はエキゾチックな別世界のように映るだろう。

 私は昭和39年生まれだが、それでもぎりぎり、この映画にノスタルジーを感じることができる。駄菓子屋とか学校、小さい商店街などの雰囲気は、私が子どものころもまああんなものだったし。

 ストーリーもよくできている。「泣きどころ」が全部で4つあって、気持よく泣ける映画だ。

 そして、薬師丸ひろ子の堂々たる「日本の母」ぶりに感じ入った。

 デビュー作『野生の証明』から『セーラー服と機関銃』までの薬師丸ひろ子は、「日本の少女」のイコンであった。その彼女が、四半世紀の時を経ていま、まごうかたなき「日本の母」のイコンと化した。長年のファンとして感慨深い。

 この映画の母親役をたとえば黒木瞳が演じたなら、スタイルがよすぎて、またあまりに女優然としすぎて興ざめであったろう。薬師丸ひろ子の大根足、背の低さ、ずんぐりむっくりとしたスタイルなどが、ここではむしろ、「ふつうの日本の母」らしさを裏打ちする強みとなって活きている。

 こうなったら、薬師丸ひろ子には日本一の「母親女優」になってほしい。私はそれでもファンでありつづけるだろう。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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