『いちばんきれいな水』

いちばんきれいな水 [DVD]いちばんきれいな水 [DVD]
(2009/01/28)
加藤ローサ菅野莉央

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 京橋の映画美学校第2試写室で、『いちばんきれいな水』の試写を観た。10月7日公開の邦画。古屋兎丸のマンガの映画化である。

 公式サイト→ http://www.cplaza.ne.jp/kireina-mizu/

 小学6年生の夏美には、難病で11年間眠ったままの姉・愛がいる。
 夏休みのある日、母の妹がブラジルで事故に巻き込まれたとの連絡が入り、両親は2人の娘を自宅に残してあわただしく現地に向かう。

 姉妹が初めて2人きりで過ごす夜、奇蹟は起きた。眠ったままだった愛が突然目を覚ましたのだ。

 実際には19歳の愛だが、心は眠りについた8歳のときのまま。12歳の妹のほうがはるかにしっかりしている。幼子のように無邪気な愛の行動に、振り回される夏美。

 やがて愛は、「いちばんきれいな水」があるという場所へと夏美を誘う。その場所には、愛が夏美に明かさなければならない一つの「秘密」が封印されていた。
 だが、3日間を2人で過ごしたあと、愛はふたたび長い眠りにつくのだった……。

11年前の大切な秘密を伝えるために、今夜、彼女は目を覚ます。
姉と過ごした奇蹟の3日間。姉妹のかけがえのない夏がはじまる。

 
 ――というのが、チラシに書かれたこの映画のコピー。なかなか魅力的ではないか。

 愛を演ずるのは、最近テレビドラマやCMでよく見る加藤ローサ。
 夏美役の菅野莉央は、『ジョゼと虎と魚たち』で池脇千鶴の子ども時代を演じていた子だ。「天才子役」との評価に恥じない達者な演技をみせる。
 
 「点滴だけで生き長らえていた少女があんなにふくよかなはずがない」とか、「11年間眠りつづけていたのに、起きたその日から普通に活動できるはずがない」とか、そういうことは言いっこなし。これはあくまでファンタジーなのだから。

 童話の「いばら姫」をふまえた「眠れる美少女」のイメージに、加藤ローサはまさにうってつけ。彼女のふわっとした透明感が、現実離れした設定の違和感を帳消しにしている。

 監督のウスイヒロシはこれがデビュー作だが、以前からJ-POPのビデオクリップの世界では売れっ子で、CMの世界でも活躍しているという。この映画でも、絵作りのうまさや音楽の使い方のセンスは「さすが」と思わせる。

 残念なのは、中盤の笑いを狙った場面がことごとくすべって笑えない点。

 「19歳なのに内面は8歳」というギャップ、「妹のほうが姉より人生経験が豊富」という逆転した関係。それは十分に笑いの駆動力になり得たはずで、たとえばクドカンのように笑いが得意な脚本家なら、この中盤部分で10回は観客を笑わせただろう。
 この映画の脚本家(三浦有為子)も監督もセンスはよいのだが、「笑い」については不得意なようだ。

 終盤に自然な転調があって、姉の秘密が明かされるクライマックスは怒濤の「泣き」展開となる。このへんは非常に素晴らしい。泣ける。だからこそ、中盤でもっと笑えていたなら、そのクライマックスがさらに活きただろうと惜しまれる。

 とはいえ、全体的にはよくできたファンタジーであり、愛すべき佳編だ。上映時間90分とこじんまりまとまっている点も含め、上質の短編小説のような味わいがある。
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United Cinemas Toyosu 「いちばんきれいな水」初日舞台挨拶

2006年10月07日(土)10:30上映開始。映画については、加藤ローサは精神年齢8歳の役がほぼ素でできる、という点がみどころかな。それっていいことなのかどうなのかという話はさておき。カヒミ・カリィさんの台詞廻しはこれが初出演とは思えないほど自然、ヴォーカリストの時

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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