西原由記子『自殺する私をどうか止めて』


自殺する私をどうか止めて自殺する私をどうか止めて
(2003/12)
西原 由記子

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 西原由記子著『自殺する私をどうか止めて』(角川書店/1300円)読了。
 ボランティア団体「自殺防止センター」の所長である著者が、同センターの活動を振り返り、自殺防止活動の意義と遺族ケアの重要性を訴えた一冊。

  → 「自殺防止センター東京」のサイト

 私が「自殺防止センター」と著者の名を知ったのは、別冊宝島445号『自殺したい人びと』(これはよくできた本)所収の北島行徳のルポによってである。

 電話を通じて悩める人々の声に耳を傾けるボランティアといえば、「いのちの電話」がある。「いのちの電話」が幅広い悩みを対象にしているのに対し、「自殺防止センター」はその名のとおり、自殺だけに的を絞っている。また、電話を通じた活動のみならず、相談者との直接面談や自殺から救うための緊急出動も行っている。
 まったくの無償奉仕である自殺防止活動に生活の一部を捧げる著者たちの熱意には、頭が下がる思いだ。

 本書に教えられるのは、相手の話を真摯に「聴くこと」がいかに大きな力となるかということ。
 「自殺防止センター」という名称から、私は、“電話をかけてきた相手に自殺を思いとどまらせるため、言葉を尽くして説得する”活動を想像していた。しかし、そうではない。電話応対でたいせつなのは、相手の話をしっかりと聴くことなのだという。
 著者は次のように言う。
  

 自殺防止活動とは、自殺したいと訴える人の感情を避けようとするのではなく、共にそれを味わい、死を恐れず、死に直面することです。さらに、相談者の決断を重んじることです。



 「相談者の決断を重んじ」たら自殺防止にならないではないか、と思う向きもあるかもしれない。だが、電話をかけてくる相談者の多くは「誰にも自分の気持ちをわかってもらえない」という深い孤独感を背負っている。だからこそ、「自分の思いをわかってくれる人がここにいる」と感じることが何よりも大事で、それが自殺を思いとどまることにつながるという。

 著者は本書の中で、自分を飾ろうとする姿勢を微塵も感じさせない。過去の失敗事例や、自分たちの活動の限界についても率直に語っている。そうした姿勢に好感がもてる。

 人の苦しみや悩みがどこから出て、その人をどんなに苦しめているか、「わかりますよ」なんて簡単には言えません。ただ、わかろうとする努力があるだけです。



 そうした限界をふまえたうえで、著者は、自分たちの活動によって死の淵から蘇生した人々のことを紹介していく。相手の「死にたい」という気持ちを変えるためにたいせつなのは、しっかりと「聴くこと」、そして相手と「本気で向き合う」ことだという。

 たしかに言えるのは、本気でぶつかり合うとき何かが起きるということです。

 

 「自殺者年間3万人時代」を迎えた日本にあって、孤軍奮闘をつづける著者たちの思いが伝わってくる好著。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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