『マッチポイント』

マッチポイント(通常版) [DVD]マッチポイント(通常版) [DVD]
(2007/02/02)
ジョナサン・リース・マイヤーズスカーレット・ヨハンソン

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 六本木のアスミック・エース試写室で『マッチポイント』を観た。
 8月中旬公開予定の、ウディ・アレンの新作である。

 公式サイト→ http://www.matchpoint-movie.com

 ニューヨークに住み、ニューヨークを撮りつづけてきたアレンが、初めて全編ロンドンでロケした作品。俳優陣の多くもイギリス勢だ。
 そのためか、過去のアレン作品とはかなり趣が異なる。かりに、監督名を伏せられたままこの映画を観たら、アレンの作品だと気づく人はごく少ないだろう。

 物語の舞台は、英国の上流社会。
 元プロテニス・プレイヤーの青年・クリスが、上流階級向けのテニス・クラブの専属コーチとなり、大富豪の御曹司と知り合ったことから、野心を抱く。クリスは一族に取り入り、御曹司の妹と結婚。父親が経営する大企業でも重要なポストを与えられる。

 だが、御曹司の婚約者である女優の卵・ノラと出会ったことから、クリスの野望の歯車は狂い始める。ノラはアメリカ人、クリスはアイルランド出身。ロンドンの上流社会にあっては、ともに異邦人だ。クリスは、ノラの美しさと屈折した共感によって、どうしようもなく彼女に惹かれていく。

 2人は許されざる関係を結ぶ。やがてその関係が破綻しかけたとき、追いつめられた彼は一つの犯罪に手を染めるのだった。

 ……と、いうような話。21世紀版『太陽がいっぱい』という趣もあれば、「美女と犯罪」をエレガントに描いている点ではヒッチコック・スリラーのようでもある。それでいて、芯の部分にはやはりウディ・アレンらしさがしっかりとある。

 たとえば、深刻な場面になればなるほど不思議な滑稽味が漂うところ。映画の終盤は、「犯罪」が警察に発覚するか否かのサスペンスが見どころなのだが、ハラハラドキドキより、むしろ笑いのほうが勝っている。

 そして、最もウディ・アレンらしいのは皮肉なラスト。誰もが『太陽がいっぱい』のようなラストシーンを想像する展開にしながら、アレンはそうせず、最後の最後でするりと身をかわすのだ。

 特筆すべきは、ノラを演じるスカーレット・ヨハンソンの素晴らしさ。
 『バーバー』や『真珠の耳飾りの少女』で無垢な少女を演じ、『ロスト・イン・トランスレーション』で世間知らずのかわいい若妻を演じた彼女が、この映画では初めて危険な「ファム・ファタール(運命の女)」役に挑んでいる。主人公が惑わされるのも無理はないと思わせる、堂々たるセクシー悪女ぶりだ。

 ヒッチコックが生きていたら、きっと彼女を自作のヒロインに抜擢したに違いない。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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