月刊『創』編集部『開けられたパンドラの箱』



 月刊『創』編集部・編『開けられたパンドラの箱――やまゆり園障害者殺傷事件』(創出版/1650円)読了。

 仕事でやまゆり園事件(相模原障害者施設殺傷事件)について調べる必要があり、読んでみた。この本は昨年(2018年)刊行されたもの。

 月刊『創』に載った関連記事をまとめた本である。そのため、やや寄せ集め的なところがあり、本としてのバランスが悪い。

 「やまゆり園事件について、全容と論点を手際よくまとめた本が読みたい」と思って手を伸ばしたのだが、そういう目的にはまったく合っていない本だった。セレクト失敗。

 やまゆり園の元職員でもある植松聖被告へのインタビューや、彼が獄中から編集部に送った書簡なども掲載。その主張は身勝手きわまりないもので、読むに堪えない。

 また、植松が獄中で大学ノートに描いたというマンガも掲載されている。
 これが素人離れした絵で(彼の母親はホラー・マンガ家)、妙にうまいだけにカオスな内容の薄気味悪さが増幅されている。背筋が寒くなるようなマンガである。

 ただ、それ以外の記事部分は(玉石混交だが)充実していた。

 私がとくに強い印象を受けたのは、重複障害者の娘さんを抱えた最首悟氏(和光大学名誉教授)が、植松への「再反論」として答えたインタビュー。

 重度障害者の子を持つ当事者として、植松の犯行をマスコミで強く非難した最首氏に対し、植松は獄中から挑発的な反論の手紙を送ってきたのだという。
 その手紙を唾棄するのではなく、あえて誠実に再反論したインタビューなのである。これは重い読み応えがあった。

 また、本書には精神科医3人が参加しているのだが、その中では斎藤環氏へのインタビューがいちばん興味深かった。
(逆に香山リカ氏の発言は、〝事件にからめて、スキあらば安倍政権批判につなげてやろう〟という感じがありありで、その点に鼻白んでしまった)

 斎藤氏は、植松被告を事件前に措置入院させたことは誤りであったと言う。その主張は傾聴に値するものだ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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