本田『ほしとんで』



 仕事がらみで、本田の『ほしとんで』の既刊1~2巻と、枡野浩一原作/小手川ゆあ画の『ショートソング』全2巻を読んだ。
 前者は俳句、後者は短歌の世界を舞台にした青春マンガだが、まったく対照的な作品になっているのが面白い。

 『ほしとんで』が恋愛要素絶無の非リア充マンガであるのに対し、『ショートソング』は恋愛要素メインで美男美女ばかり出てくるのだ。
 非リア充な私は当然、『ほしとんで』の方に深く共感した。

 まあ、『ショートソング』もわりと面白いし、小手川ゆあの絵はすっきりキレイでいいんだけど、ストーリーにまるで共感できなかった。



 歌人の枡野浩一が書いた小説が原作であるわりには、短歌が目的ではなく手段として使われている印象を受けた。
 主要キャラたちの恋愛模様を描くことが目的で、それを彩るスパイスとして短歌が用いられているだけ……というふうなのだ。

 そもそも、主舞台となる短歌結社「ばれん」がリア充な若者だらけである点が、なんか絵空事な気がしてしまう。
 まあ、「短歌結社=老人メインの集い」という私の先入観が偏っているのかもしれないが……。

 いっぽう、この『ほしとんで』には俳句に対する愛が全編にあふれている印象。
 俳句の基本を知るための入門マンガとしても上質で、読んでいると「私も俳句を作ってみようかなァ」という気になる。

 舞台となる八島大学藝術学部(日芸がモデルなのだろうが)の俳句ゼミに集う面々のキャラが立っているし、言葉のセンスも抜群だ。
 何気ないセリフがおかしくて、オフビートな笑いがジワジワくる感じがたまらない。

 主要キャラ6人(俳句ゼミ生5人と講師の俳人)に甲乙つけがたい魅力があるが、私は「脳内言葉がネット民ぽくなってしまう」地味メガネ女子・薺(なずな)さんが推しキャラだ。

 俳句ゼミ生たちはそれぞれ、小説家などの表現者を目指しているという設定。彼らの表現者ワナビぶり、自意識過剰ぶり、中二病が悪化したようなこじらせっぷりが、こちらの心にもグサグサ刺さる。

 彼らが俳句に挑む姿を通して、言葉で自分の思いを表現することそれ自体の喜びが、くり返し描かれていくマンガでもある。
 〝文化系青春マンガ〟の快作。


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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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