岸本佐知子『ひみつのしつもん』



 岸本佐知子著『ひみつのしつもん』(筑摩書房/1760円)読了。

 もう18年もつづいている『ちくま』(筑摩書房のPR誌)の長寿連載「ネにもつタイプ」の書籍化第3弾。
 それ以前の『気になる部分』から数えれば、岸本佐知子の4冊目のエッセイ集である。

 私は、第1弾『ねにもつタイプ』、第2弾『なんらかの事情』もそれぞれ愛読してきた。
 7年ぶりの本書も、前2冊同様、ほかの誰にも書けない奇天烈なユーモア・エッセイの連打である。

 奇妙な味わいの海外小説の名訳者として知られる著者だが、このシリーズのエッセイにも、奇妙なショートショートのような味わいのものが少なくない。
 本書もしかり。とくに「河童」は、絶品のショートショートとしても読めると思った。

 版元がつけた惹句は「奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールド、みたび開幕!」というもの。
 「奇想天外」はそのとおりで、想像力を超えた「妄想力」の炸裂がこのシリーズの見どころである。

 だが、「抱腹絶倒」はちょっと違う気がする。
 クスっとする笑いは随所にあるし、思わず吹き出す一節も少なくないが、「キシモトワールド」の笑いはもっとジワ~ッと広がる奇妙な笑いであって、しゃべくり漫才的な爆笑とは異なるものだ。

 著者の妄想にこちらがうまくノレないというか、何が言いたいかわからないエッセイが8分の1くらいある。これは前2冊も同様だった。

 シリーズの中でとくに面白いエッセイをセレクトして、「ベスト・オブ・ネにもつタイプ」を私的に作ってみたい。そんな衝動にもかられるくらい、私はこのシリーズが好きだ。

■関連エントリ
岸本佐知子『なんらかの事情』
岸本佐知子『ねにもつタイプ』
岸本佐知子『気になる部分』

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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