澤村伊智『ひとんち』



 澤村伊智著『ひとんち  澤村伊智短編集』(光文社/1728円)読了。

 「比嘉姉妹シリーズ」の短編集としては先日読んだ『などらきの首』があるが、これは同シリーズ以外の作品を集めた短編集。

 8編の短編ホラーを収めている。出来にはかなりバラツキがあり、玉石混交。
 最初の3編があまり面白くなかったので、「やっぱり、澤村伊智は比嘉姉妹シリーズじゃないとダメかな」と思いかけた。

 が、後半の「宮本くんの手」と「シュマシラ」は2編とも傑作だ。
 とくに、「宮本くんの手」は完成度が高い。斬新なアイデア、意表をつく展開、バッチリ決まった見事なラストの三拍子が揃い、澤村伊智ならではの好短編に仕上がっている。

 「シュマシラ」は、タイトルからして澤村ワールド。
 「比嘉姉妹シリーズ」の「ぼぎわん」や「ししりば」同様、〝日本に古くからいた伝説の化け物が人を襲う〟というテイで創り上げられた、ジャパネスクなホラーである(「シュマシラ」=「朱猿」。「ましら」は猿の古名)。
 冒頭の伏線が、ラストでまさかこんな形で回収されるとは……という、「一本取られたな」感が味わえる。

 その2編に次ぐ出来なのが、「死神」。
 いわゆる「不幸の手紙」から発想した、おぞましい「不幸の◯◯」(ネタバレ回避)の物語。

 残りの5編は一段落ちるが、それでもキラリと光る部分は随所にある。
 たとえば「夢の行き先」は、ラストにもうひとひねり欲しい気がしたが、アイデア自体はすごく斬新だ。
 ホラーのサブジャンルに「悪夢もの」というのがあるかどうか知らないが、かりに「悪夢ものホラー」を集めたとしたら、その中でもアイデアの独創性では上位にランクされるだろう。よくこんなことを思いつくものだ。

 あと、一見地味なのに細部が凝っている装幀(坂野公一)も素晴らしい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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