『こんな夜更けにバナナかよ』



 『こんな夜更けにバナナかよ』を映像配信で観た。



 大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した、渡辺一史の傑作ノンフィクションの映画化。
 難病「筋ジストロフィー」と闘う鹿野靖明(1959~2002)と、彼を支えるボランティアたちの日常を描いている。

 脚本(橋本裕志)がすこぶるウェルメイドである。最初から最後まで、少しも退屈がない。

 こんなふうに、障害者の日常を笑いをまじえて描く映画というのは、日本映画にはこれまで例がなかったのではないか(洋画なら『最強のふたり』などがあるが)。

 これまで、日本の映画やテレビドラマではもっぱら、身障者は哀れみの対象として、また、清らかで欲望も悪意も持たない、いわば〝純粋弱者〟として描かれてきたからである(邦画のわずかな例外は『ジョゼと虎と魚たち』くらいか)。

 しかし、自分では寝返りすら打てない重度身障者であっても、欲望もあれば悪意もある。あたりまえのことだ。本作はその「あたりまえ」を、軽快かつリアルに描いている。

 身障者を描いた映像作品としては、1979年放映の山田太一脚本作品「車輪の一歩」(連続ドラマ『男たちの旅路』の一話)が、画期的であった。
 それまでの「欲望も悪意も持たない清らかな身障者」像から離れた、等身大の身障者像が初めてテレビドラマに描かれた作品だったのだ。



 『こんな夜更けにバナナかよ』は、「車輪の一歩」から40年の時を経て、〝映像に描かれた身障者像〟の期を画した作品だと思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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