末井昭『自殺会議』



 末井昭著『自殺会議』(朝日出版社/1814円)読了。

 同じ版元から2013年に出た『自殺』の続編というか、スピンオフ本というか。

 子どものころに母親をダイナマイト心中で喪った末井昭は、そのことを起点に、自殺についての論客(末井に似合わない言葉だが)として遇されるようになった。『自殺』は、その分野の言論活動における最初の集大成であった。

■関連エントリ→ 末井昭『自殺』

 『自殺』は基本的にはエッセイ集で、エッセイの合間に末井によるインタビュー(相手は、両親を自殺で一度に喪った女性、長年青木ヶ原樹海をパトロールしていた作家の早野梓など)が入っていた。

 本書は、その対話部分のみを広げたような構成。「それぞれ自殺に縁のある方々」へのインタビューや対談が集められている。ゆえに、タイトルが『自殺会議』なのだ。

 登場するのは、統合失調症で自殺未遂の経験があるお笑い芸人の松本ハウス、母親を自殺で亡くした作家の岡映里、長男を自殺で喪った映画監督の原一男など、計11人。

 本書の根源的な企画意図は自殺防止推進にあるのだろうが、末井のことだから、「死んじゃいけないよ!」と声高に訴えるような内容にはなっていない。その点は前作『自殺』と同じ。

 「まえがき」にはこうある。

『自殺』を書く上でのモットーは「面白い自殺の本」でしたが、それはこの本にも引き継がれています。死にまつわる深刻な話をしているのに、ついつい笑ってしまうところもあるかもしれません。そういう箇所がありましたら、バカなことを言っているなと思って笑ってください。そうすれば、死にたい気持ちも薄らぐと思いますよ。



 本書の最後に収められた、画家・弓指寛治(母を自殺で喪ってから、自殺をモチーフにした絵を描き始めて脚光を浴びた人)との対談などはまさにそうで、自殺についての対談にもかかわらず、「(笑)」がたくさん出てくる。

 また、自殺の名所・東尋坊で自殺企図者を救う運動を長年つづけてきた茂幸雄との対談では、茂は対談中ずっと酒を飲んでおり、酔っぱらった状態で話をしている。茂の活動を「美談」として報じたい一般マスコミなら、そんなことはわざわざ書かないだろう。

 以上のようなことは、ほかの書き手が真似をしたら「不謹慎だ」と批判を浴びるだろう。末井昭のキャラだから許される特異な「芸」なのだ。

 随所にハッとするような卓見、ずしりと重いエピソードがあり、読み応えのある一書である(岩崎航、弓指寛治との対談はとくに深いと思った)。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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