藤谷治「新刊小説の滅亡」



 8人の作家の競作アンソロジー『本をめぐる物語――小説よ、永遠に』 (ダ・ヴィンチ編集部・編/角川文庫)に収録された、藤谷治の「新刊小説の滅亡」を読んだ。

 ツイッターで小谷野敦氏が「これに芥川賞をあげたいくらい」と絶賛し、栗原裕一郎氏もホメていたので読みたくなったのだ。

 なるほど、これは傑作。しかも、「現役の小説家がこんな話を書いて大丈夫なのか?」と心配になるような「ヤバイ傑作」だ。

 近未来のある日、日本の文芸誌、小説誌がいっせいに廃刊する。のみならず、出版社がいっせいに新刊小説の刊行をやめる。
 なぜなら、もう小説は「終わっている」ので、新刊小説を刊行しても何の意味もないし、文学にとって有害だから(!)。

 ……と、そのような度肝を抜く設定の短編。

 新刊小説の廃止が決行されてから起きる出来事の数々に、ぞっとするリアリティがある。
 各出版社は過去の名作に注目が集まることでむしろ潤い、才能ある作家たちは他のコンテンツ業界で引っ張りだこになるから、無問題。才能なき作家たちが淘汰されて消え去るのみなのだ。読者の側も、新刊小説が出ない世界にすぐさま順応する。
 要は、新刊小説など出なくても誰も困らないのだ。

 文芸業界をめぐるタブーに踏み込んだエンタメ小説としては、東野圭吾の「小説誌」という傑作短編(『歪笑小説』所収)があるが、それに勝るとも劣らない。

■関連エントリ→ 東野圭吾『歪笑小説』

 藤谷治の小説を読むのはこれが初めてだが、ほかの作品も読んでみよう。

 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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