丸山健二『真文学の夜明け』



 丸山健二著『真文学の夜明け』(柏艪舎/2160円)読了。

 丸山は10代のころ、大好きな作家だった。そして、24年前の『まだ見ぬ書き手へ』は名著だった。が、『まだ見ぬ書き手へ』の続編として書かれたという本書は……、はっきり言って読むに堪えなかった。

 最近の丸山作品はみんなそうらしいのだが、まるで現代詩の詩集のようなスカスカの文字組みがなされている。この本も530ページ超の厚さなのに、1時間で読めてしまった。

 内容は、①いまの日本文学がいかにダメか、②大出版社の編集者がいかに無能揃いか、③既成の文学賞に応募しても、真にすごい作品は理解されず落とされるから無駄である、④だから、文壇や既成出版社に関わることなく、自分の作品を磨き続けるしかない……ということが、言葉を換えて何度も何度もくり返されるだけ。

 いまの文壇や文芸誌、作品をなじる言葉の中には、首肯できるものもないではない。だが、「じゃあ、他の作家や作品をそこまで下に見るいまの丸山は、それほどすごい作品を書いているのか?」と問いたくなる。

 本書によれば、丸山は文学作品を1~20のレベルで評価しており、古今の名作でもレベル15は数えるほどしかなく、芥川賞作品でも2.5~3程度だとか。

 そこまではまあいいのだが、丸山はなんと、「わが文学の作品のレベルは十五ほど」だという。つまり、芥川賞受賞作の平均値などはるかに超えて、古今東西の数えるほどしかない名作群と肩を並べるものなのだと、臆面もなく自画自賛しているのだ。
 昔ファンだった私も、さすがにドン引き。「ついていけない」という気分になる。

 かつての『まだ見ぬ書き手へ』でも、〝賞など狙わず書き下ろしで勝負せよ。編集者とはベタベタ付き合うな〟とは書いていた。それでも、編集者に対する最低限の信頼は感じられた。

 本書で大手出版社と文芸編集者を罵倒しまくっているのは、穿った見方をすれば、丸山自身がもう大手に相手にされなくなったからではないか。

 さらに穿った見方をしてみる。
 本書自体が、年間受講料50万円の「丸山健二塾」(作家要成塾)と、1作品5,000円のエントリー費(応募料)が必要な「丸山健二文学賞」の、宣伝目的で書かれているのではないか。

 本書の後半で、既成文学にはやたらと厳しい丸山が、丸山塾受講生の質の高さを持ち上げまくっているあたり、そんなふうに思えてしまうのだ。

 丸山塾の宣材として書かれたと仮定すれば、本書で〝既成の文学賞になど応募しても無駄だ〟と主張する真の理由も、なんとなく透けて見える。

 既成の文学賞を得て世に出るための塾であれば、厳しく成果が問われる。「何年も塾をやっていながら、一人も受賞者を輩出していないのか?」と……。
 だが、丸山塾ではそのような成果は問われない。そして、塾生たちは〝既成文壇には具眼の士もいないから、私たちが目指す「真文学」は認められなくて当然なのだ〟と、阿Qばりの「精神勝利法」で安堵することができる。
 塾長と塾生たちの〝相互慰撫装置〟として、完璧である。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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