梶芽衣子著『真実』(文藝春秋/1458円)読了。
女優・梶芽衣子が、デビューから現在までの来し方を語った自伝である。
清水まりというライターが構成(インタビューして話を文章にまとめる)を担当しており、清水の名は表紙や背にもちゃんと載っている。つまり「ゴースト」ではない。
ものすごく読みやすい本で、あっという間に読み終えることができる。
清水まりのまとめ方がプロだ。ヘンに気取った、凝った表現は一切使わず、梶芽衣子の語りをわかりやすく読者に伝えることに徹している。
「媚びない・めげない・挫けない」という帯の惹句のとおり、梶芽衣子のカッコよさが全編に横溢した一冊。
新人時代から、筋の通らないことがあれば監督にも堂々と文句を言ったという彼女は、大物女優になってからも「媚びない・めげない・挫けない」をつらぬき通す。
最大の当たり役となった『女囚さそり』の、画期的な〝一言も話さないヒロイン像〟は、梶芽衣子自身がアイデアを出し、周囲の反対を押し切って実現したものなのだという。
また、一作限りの約束だった『さそり』が大ヒットしたことで、第2作・第3作が作られることになったとき、梶は当初出演を拒否する。出演を説得しようとする大物プロデューサーらが待つ現場に、事務所の社長やマネージャーの同行も拒否し、一人で乗り込んでいく様子は、任侠映画の殴り込みシーンのようなカッコよさだ。
本書の圧巻は、『鬼龍院花子の生涯』をめぐって大物プロデューサーの裏切りに遭った(元は梶が自らの主演で企画した映画だったのに、盗られてしまった)経緯が綴られたくだり。その裏切りに対して梶が取った態度がまた、なんともハードボイルドなのである。
勝新太郎・高倉健・渡哲也・深作欣二・長谷部安春など、綺羅星の如き役者と監督たちの思い出が、印象的に語られている。
梶芽衣子ファンのみならず、邦画ファンなら間違いなく楽しめる好著。