吉田尚記『没頭力』



 吉田尚記(ひさのり)著『没頭力――「なんかつまらない」を解決する技術』(太田出版/1200円)読了。

 ニッポン放送アナウンサーの著者が、自らの経験や専門家へのインタビューを元に書いたフロー体験入門。

 フロー体験研究の本家本元であるミハイ・チクセントミハイや、ポジテイブ心理学の創始者マーティン・セリグマンの著書を、主な参考文献として用いている。
 ゆえに、チクセントミハイの著書やポジティブ心理学の本をすでに読んでいる人なら、本書の内容はとくに目新しいものではないだろう。

 ただし、著者は職業柄か「わかりやすく語る技術」が素晴らしく、抜きん出た平明さに本書の価値がある。フロー体験について、これほどわかりやすく説明した入門書はほかにないだろう。
 そもそも、タイトルの「没頭力」からして、フロー体験に入るための力を一言で言い換えた造語として卓抜だ。

 私は、チクセントミハイの『フロー体験入門』や『フロー体験 喜びの現象学』は、いずれも歴史に残る名著だと思う。ただ、チクセントミハイには哲学者肌のところがあるから、内容はけっして平明ではない。
 著者はそれを、中学生にも読めるくらいわかりやすくブレイクダウンしてみせたのだ。

■関連エントリ
ミハイ・チクセントミハイ『フロー体験入門』
ミハイ・チクセントミハイ『フロー体験 喜びの現象学』
 
 日本人には、難解なものをありがたがり、わかりやすさにあまり価値を認めない傾向がある。が、難しいことをわかりやすく語る知的咀嚼力というのは、じつは大変な才能なのである。その点で、著者もすごい才能の持ち主だと思う。

 「『なんかつまらない』を解決する技術」という副題が示すとおり、著者はフローに入るための「没頭力」を、習得できる「スキル」として捉えている。そして、そのスキルを磨くためのコツを、さまざまな角度からわかりやすく説いていく。

 本来もっとも上げるべきスキルって何? って考えたとき、「自分が一番磨くべきスキルは、自分が楽しくなるスキル」だと僕は思うんです。
 しかもそれはスキルなので磨くことができる。ここがポイント。持って生まれた才能ではないんです。



 ポジティブ心理学の書がどれも一種の幸福論であるように、本書もまた、「なんかつまらない」「生きづらい」と感じている人たちに向けた、いまどきの幸福論でもある。

 それがどんな形でも「没頭」した後というのは、自己肯定感が高まっているんだそうです。
 日常の中にある弱い没頭でも、それをした後にはスッキリした満足感と自己肯定感が得られる。だったら、それを毎日ひとつでも繰り返していけば、「ワクワクして目が覚めて、夜満ち足りて眠る」人生って送れるんじゃないかなと僕は思います。



関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
29位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
21位
アクセスランキングを見る>>