『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』



 『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』をDVDで観た。



 ジャニス・ジョプリンのドキュメンタリー映画はこれまでにもあったが、管見の範囲では本作がいちばんよいと思う。

 シンガー・ソングライターのキャット・パワーがナレーションを担当していて、随所でジャニスの手紙を読み上げるのだが、その声がジャニスによく似ていて、本人が読んでいるかのよう。

 ロック・スターとしてのジャニスより、一人の女性としてのジャニスに焦点が当てられている。監督も女性だ。
 そして、ここに描き出されたのは、生涯にわたってずっと孤独であった女性の肖像だ。 
 「歌っているときだけ、ひとりじゃなかった。」というのが本作のキャッチコピーで、ジャニスの本質を衝いた秀逸なコピーだと思う。

 ジャニスは稀代の女性ブルース・シンガーだが、白人の彼女がブルースにのめり込んでいったのは、ブルースを生んだ黒人たちが受けていたような差別を、彼女も受けていたからにほかならない。人種によってではなく、容姿によって。

 テキサス大学の学生時代、「いちばんブサイクな男コンテスト」なるもので、ジャニスは女性なのに1位に選ばれてしまう。そのことをデカデカと報じた学生新聞が、本作でも映し出される。
 「キャリーがこんなことされたら、キャンパスを焼き尽くしてるぞ」という感じの、すさまじいイジメである。

 ジャニスをモデルにした映画『ローズ』で、ベット・ミドラー演ずる主人公ローズが、ステージで次のように言う。

「『いちばん最初にブルースを歌ったのはいつ?』って、よく聞かれるわ。答えは、『生まれた日よ』。なぜって? 女に生まれたからよ」



 女性として深く傷つけば傷つくほど、ジャニスはブルースにのめり込まざるを得なかった。そして、シンガーとしての天賦の才が開花し、彼女は歌っているときだけまばゆく輝いた。
 それでもなお、彼女の孤独は癒えなかったのだ。

「私はステージで2万5千人とメイク・ラヴして、一人さびしく家に帰るのよ」



 ……というジャニスの名言があるが、本作が活写するのも、彼女のそのような姿である。

 さまざまな生きづらさを抱えているいまの日本の若者も、ジャニス・ジョプリンを聴いてみるといいと思う。時代を超えて、「私と同じだ」と共感する女性に出会えるはずだ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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