橘玲『80's ――ある80年代の物語』



 橘玲著『80's エイティーズ ――ある80年代の物語』(太田出版/1728円)読了。

 人気作家・橘玲が初めて書いた自伝的著作。
 早稲田大学に入学して上京した70年代末から、『宝島30』の編集長としてオウム真理教事件などの取材に当たった90年代半ばまでの思い出が綴られている。その期間が著者にとって〝長い80年代〟であり、〝長い青春時代〟でもあったということなのだろう。

 読みながら思い出したのは、私の大好きな本でもある川本三郎さんの『マイ・バック・ページ』である。
 『マイ・バック・ページ』は川本さんの自伝的著作で、1960年代末から70年代初頭を舞台に、『週刊朝日』『朝日ジャーナル』の若手記者だった時代の思い出が綴られている。
 著者の青春グラフィティであると同時に、時代のアイコンが次々と登場する60~70年代グラフィティとしても出色の一冊だ。

 同様に、本書は著者の青春グラフィティであると同時に、ウェルメイドな80~90年代グラフィティにもなっている。〝橘玲版&80年代版の『マイ・バック・ページ』〟と言ってもよい(『マイ・バック・ページ』の副題は「ある60年代の物語」であったし、著者や編集者もあの本を意識していると思う。川本さんに本書を書評してほしい)。

■関連エントリ→ 『マイ・バック・ページ』

 私は著者より5歳下だが、80年代半ばからの出来事については共通の記憶も多く、たまらなく懐かしい気持ちになった。『宝島30』もずっと読んでいたし。

 若き日の町山智浩や内田樹、自殺してしまった青山正明など、著名人との思い出も綴られるが、それ以上に、仮名で綴られる名もない人々との思い出の数々が胸に迫る。

 編集者/ライターとしてのエピソードの数々もいちいち面白い。それは、出版界に勢いがあったバブル時代ゆえの面白さでもある。本が売れない時代しか知らない若い人にとっては「別世界」な話も多いだろう。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
23位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
18位
アクセスランキングを見る>>