島田雅彦『深読み日本文学』



 島田雅彦著『深読み日本文学』(集英社インターナショナル新書/821円)読了。

 芥川賞選考委員でもある(が、当人は芥川賞を取れなかった)著者による、独創的な日本文学案内。
 
 『源氏物語』から説き起こし、終章ではAIによって小説が書かれる未来にまで言及している。1000年を駆け足でたどった日本文学史の概説書としても読める。

 おそらく著者の大学での講義がベースになっているのだと思うが、語り口調に近い文章で書かれており、わかりやすい。内容的にも、大学生くらいが読んでちょうどいい感じ。

 夏目漱石・樋口一葉・谷崎潤一郎について、各一章を割いて論じた中間の3つの章が、とくに面白かった。
 わけても一葉についての章は、“一葉が作家としてどう優れているのか?”が、本書を読んで初めてわかった気がする。

 帯の惹句「常識を揺るがす新しい読み方。」はいささか大げさだが、随所に卓見がある良書には違いない。
 
 ただ、隙あらば内容を現政権批判に結びつけようとするような箇所も散見され、そのへんの“要らざる政治色”は読んでいて辟易としたが……。

 以前、当ブログで島田の『小説作法ABC』を取り上げたとき、私は次のように書いた。

 本書を読んで改めて感じたのは、島田雅彦は作家としてよりもまず評論家として、ひいては文学研究者として非常に優秀であるということ。いまや島田も作家兼大学教授だが、最初から文学研究者としてアカデミズムの道を歩んでいたとしても一家を成した人だと思う。
 逆に言うと、評論家肌、研究者肌だからこそ、島田の小説はあまり面白くないのかも。



 本書からも、まったく同じ印象を受けた。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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