小川仁志『超・知的生産術』



 小川仁志著『超・知的生産術――頭がいい人の「読み方、書き方、学び方」』(PHP研究所/1620円)読了。

 哲学者の著者が、哲学の方法を知的生産に活かすコツを説いた本。
 哲学とは物事の意味・本質を徹底して考えていく営みだから、哲学的思考を身につけていれば、知的生産も効率的に行える(=本質をつかんだうえでできるから)、というわけだ。

 ありそうでなかった本だと思うし、企画意図はよいが、タイトルがダメ。
 哲学者が「哲学を知的生産に活かす法」を説いた点が本書のウリなのに、タイトル/サブタイトルを見ただけではそのことがまるでわからないのだ。
 そもそも『超・知的生産術』って、野口悠紀雄と梅棹忠夫の50番煎じくらいな感じで、いただけない。

 中身も、ちょっと拍子抜け。
 「<哲学式>知的生産術」と銘打たれた第4章では、「哲学式文章力」「哲学式プレゼン能力」「哲学式対話力」「哲学式質問力」などが語られているが、そこで著者が説くことは、どれもびっくりするほどありきたりだ。

 たとえば、著者は「人を惹きつける文章を書くためのテクニック」として、「①意識して真似るということと、②仕掛けるということ」の2つを挙げる。

 ①は、好きな作家など、うまい人の文章を「意識して真似る」こと。
 ②は、「読み手がページをめくる」ための「仕掛け」として、「期待を持たせる表現を時々織り込む」こと。
 その例として、「その時、大変なことが起こったのです」、「ところが」「にもかかわらず」「実は」などという、「何か自分の知らないことがあると思わせる」表現を挙げている。
 これのどこが「哲学的文章力」の方法なのだろう? 一般的な文章術の本にだって、いまどきこんな凡庸なことは書いてないと思う。

 ……と、ケチをつけてしまったが、有益な部分もある。

 とくに、第2章「哲学者の思考の秘密」が、突出して面白い。
 この章は、「デカルト、カント、ヘーゲル、ニーチェ、サルトル、デリダという超一流哲学者たちの伝記をひもとき、彼らの思考の秘密を探っ」た内容。ここをもっと広げればよかったのに……。

 また、巻末付録のブックガイドも、「哲学思考をベースに効果的な知的生産を行う」ことに役立つ本を集めたもので、有益。読みたい本がいくつも見つかった。

■関連エントリ→ 小川仁志『日本の問題を哲学で解決する12章』

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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