加納秀人の新作『Thank You ~Hideto Kanoh 50th Anniversary~』(テイチクエンタテインメント/3000円)を聴いた。
1970年代J-ロックのレジェンドにして、いまなお現役バンドである「外道」の加納秀人が、キャリア50周年の佳節を記念して出したソロアルバム。
ジャケットのシルエットの用い方が、ジャニーズのタレントを起用した雑誌の表紙(=ウェブ上で写真が使えないので、そこだけシルエットになる)みたいで、なんかヘン。
内容は、最初から最後までギター弾きまくり。加納秀人のぶっとくうねるダイナミックなギターを堪能できる。
ギターワークは素晴らしいのだが、ヴォーカル曲がどうも古臭い。グループサウンズ的というか演歌的というか、いかにも日本人な湿っぽい「泣きのフレーズ」に満ちていて、ちょっといただけない。
70年代の「外道」のサウンド――「香り」とか「ビュンビュン」とか――は、もっとカラカラに乾いていて、そこが痛快だったのだが、なぜいまになって先祖返り的にGSっぽくなってしまうのか、不思議。
↑外道の代表曲「香り」。問答無用のキラーチューンである。
本作における加納秀人のヴォーカルが、甲斐よしひろを少しヘタウマにしたような感じで、演歌的なエモーションを感じさせるため、なおさらそう思う。
……なので、アルバム中に3曲あるインスト曲のほうが、私は気に入った。3曲とも、ビリビリした緊張感に満ちていて最高である。
ただし、ヴォーカル曲も、加納秀人のギター自体は最初から最後まで素晴らしい。
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