ノーム・チョムスキー『アメリカンドリームの終わり』



 ノーム・チョムスキー著、寺島隆吉・寺島貴美子訳『アメリカンドリームの終わり―― あるいは、富と権力を集中させる10の原理』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/1944円)読了。書評用読書。

 卓越した言語学者であると同時に、米国を代表する左派論客としても活躍してきたチョムスキーの、語り下ろしによる新著。

 タイトルのとおり、“アメリカにはもはやアメリカンドリームはない”という苦い真実を伝える書。何年か前に出たヘドリック・スミスの『誰がアメリカンドリームを奪ったのか?』の類書といえる。

■関連エントリ→ ヘドリック・スミス『誰がアメリカンドリームを奪ったのか?』

 スミスもチョムスキーも、上位1%の富裕層が国の富をほぼ独占する米国の超・格差社会化を、諸悪の根源と見ている。
 ただ、チョムスキーの批判のほうが、より激越で徹底している。
 というのも、チョムスキーは建国以来の米国の歴史を振り返り、“この国のエリート層は元々、民衆を隷属させ、富と権力を独占しようとし続けてきた”と断じているからだ。
 つまり、“アメリカンドリームの終わりは、建国以来進められてきた民衆支配のプロセスが、いま完成に近づいた結果にすぎない”との見立てである。

 チョムスキーは、米国の支配層が民衆を操り、「富と権力を集中させる」ために続けてきたやり口を、10の行動原理に集約する。そして、それぞれをくわしく説明し、米国の歴史からその例証を引いてみせる。
 一つの「原理」ごとに、それを証し立てる資料も付されており、資料的価値も高い。

 ただ、チョムスキーの言葉遣いは随所であまりにもエキセントリックで、ついていけない気分になった。たとえば――。

 共和党はいまや、世界史上、もっとも危険な組織になってしまっています。(中略)
 共和党は、ここのところ、全速力で人類を破滅の途へと促してきているからです。それは、かつてないほどの勢いです。



 (米国の)軍事費は、国民の安全保障とは、ほとんどなんの関わりもありません。(中略)それはただ、世界の支配者だけを守るものなのです。



 こういうアジビラまがいの言葉は、著者と立場を同じくする人は快哉を叫ぶだろうが、中立的読者にとってはドン引きだ。

 若者たちがiPhoneなどを買ったりすることまで、“権力者が民衆を支配するために積み重ねてきた情報操作の結果だ”とか言ってみたり、チョムスキーの見方は極端すぎ。

 とはいえ、そのようなアジテーションを差し引いて読めば、米国政治に対する根源的批判として、傾聴に値する内容ではある。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
25位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
19位
アクセスランキングを見る>>