岡田暁生『クラシック音楽とは何か』



 岡田暁生(あけお)著『クラシック音楽とは何か』(小学館/1296円)読了。

 音楽学者の著者による、クラシック音楽入門である。
 すでに類書が山ほどあるわけだが、この著者の本は前に『音楽の聴き方』というのを読んだことがあり、これが大変面白かった。なので、「岡田暁生が書いたクラシック入門なら読んでみたい」と思ったしだい。

 期待を裏切らない力作であった。本書の内容は、クラシックにくわしい人にはあたりまえのことが多いのかもしれないが、門外漢の私にはとても新鮮だった。

 面白くてためになる。著者は初心者向けに、語り口調に近い平明な文体を採用しているが、それでもなお、文章に格調と知的興奮がある。

 また、シロウトから見ると“得体の知れない大陸”のように思えるクラシック音楽の世界を、著者は手際よく腑分けし、すっきりとした全体の見取り図を読者に提供してくれる。
 たとえば、次のような一節――。

 図式的にいって、私たちがクラシックと呼んでいるヨーロッパの近代音楽には二つの「極」があった。ドイツの交響曲とイタリアのオペラである。ドイツvsイタリア、そして交響曲vsオペラ――両者はもう水と油のように音楽文化が違うのだ。ちなみにフランスやロシアなど、その他の国の音楽文化の体質は、何らかの形で両者の間にあると思っておけばいい。あくまで一般論であるが、ドイツの交響曲文化ほど真剣難解長大ではなく、さりとてイタリアのオペラ文化ほど娯楽性が強いわけでもない、といったところだ。
 「難解な音楽」としてのクラシックのイメージは、専らドイツ/オーストリア音楽によって作られてきた。このことをどれだけ強調してもしすぎではない。クラシックのすべてが「真剣な音楽」(単なる娯楽ではない音楽)というわけではないのである。



 質の高いクラシック入門であると同時に、音楽エッセイとしても愉しめる書。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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