天祢涼『希望が死んだ夜に』



 天祢涼(あまね・りょう)著『希望が死んだ夜に』(文藝春秋/1836円)読了。

 14歳の女子中学生が、同級生の美少女を殺害した容疑で逮捕された。少女は殺害を認めたものの、動機はまったく語らないという、いわゆる「半落ち」(=一部自供)状態。果たして、刑事たちは送検までに事件の真相を見出し、「完落ち」させることができるのか?

 ……という感じの「社会派青春ミステリ」。なぜ「社会派」かといえば、逮捕された少女の家が貧しい母子家庭であり、「子どもの貧困」の問題が前面に出た小説になっているから。

 少し前に読んだ栗沢まりの『15歳、ぬけがら』も、貧しい母子家庭の女子中学生を主人公にした小説であった。作品のタイプは異なるものの、昨年時を同じくして、「子どもの貧困」をエンタメの鋳型に入れた小説が立て続けに刊行されたわけだ。

■関連エントリ→ 栗沢まり『15歳、ぬけがら』

 2作を比べてみれば、メフィスト賞作家ですでに売れっ子の天祢涼の作品のほうが、やはりうまい。
 「なるほど。手練の作家というのは、旬な社会問題をこんなふうにエンタメ化するのか」と、その鮮やかな手際に感服した。
 終盤のどんでん返しも、バッチリ決まっている(ただし、帯の「切なすぎるラストに誰も耐えられない。」という惹句は、ちょっと大げさ)。

 しかし、『15歳、ぬけがら』のほうが、まだぎごちなさはあるものの、子どもの貧困問題に真正面から向き合う切実さを感じさせる。
 それに比べ、『希望が死んだ夜に』は、あくまで物語の「素材」として「子どもの貧困」を扱っている印象。どこか絵空事・他人事なのである。
 
 とはいえ、エンタメとしての完成度はなかなかのもので、値段分は十分に楽しめた。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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