『ドリーム』



 『ドリーム』を映像配信で観た。



 評判どおりの素晴らしい作品だった。
 ハリウッド映画の美点が集約されている感じ。「わかりやすい感動」に満ちており、しかも映画全体がポジティヴ。黒人差別をストーリーの核に据えながらも、笑いが随所にある。
 自らが被る差別に、明るさとユーモア、そして何より「人としての誇り」を武器に抗していく黒人女性たちを描いているのだ。

 近年パッとしなかったケヴィン・コスナーが、久々に彼らしいハマり役をいきいきと演じている点も好ましい。

 NASAにおける黒人女性差別の描写には、史実と比して潤色もあるようだが(実際には1960年代初頭のこの時期、もう少し差別が解消されていた)、それも感動を盛り上げるための「よい潤色」になっている。
 
 「黒人専用トイレ」の存在がストーリーの鍵になるのだが、それを観て思い出したのは、以前読んだ『ローザ・パークス自伝』の一節。
 子ども時代の彼女は、「白人用」の水飲み場を見ながら、「あの水はきっと、黒人用のよりもずっとおいしいのだろう」と思っていたという。切ない話だ。

 この映画は音楽も素晴らしい。アカデミー賞の作曲賞・歌曲賞に、ノミネートすらされなかったのが不思議だ(作品賞・助演女優賞・脚色賞にはノミネート。また、ゴールデングローブ賞では音楽賞にノミネートされた)。

 ハンス・ジマーらのスコアがよいし、ファレル・ウイリアムスが書き下ろした曲の数々が絶品だ。
 マイルス・デイヴィスの「ソー・ホワット」など、当時の音楽も使われている中にファレルの新曲も混ざっているのだが、それらがいかにも「1960年代初頭風」に作られており、微塵も違和感がない。

 とくに、「若き日のスティーヴィー・ワンダー風」の曲「Crystal Clear」などは、「スティーヴィー・ワンダーにこんな曲あったっけ? なんて曲だっけ?」と、しばし考えてしまったほど。



 ファレル・ウィリアムスについて、「『HAPPY』は素晴らしかったけど、あとの曲はパッとしないなァ」という印象を私は持っていたが、この映画ですっかり見直した。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
29位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
21位
アクセスランキングを見る>>