ティグラン・ハマシアン『シャドー・シアター』ほか



 ティグラン・ハマシアンの『シャドー・シアター』『モックルート』をヘビロ中。

 ティグラン・ハマシアンは、アルメニア出身のジャズ・ピアニスト。まだ日本での名前表記も揺らいでいるようで、「~ハマシャン」という表記も散見する。

 私は恥ずかしながらまったく知らない人だったのだが、お気に入りアーティストの一人であるミシェル・ンデゲオチェロが、インタビューの中で「最近よく聴いているアーティスト」として名前を挙げ、絶賛していた。
 で、「彼女がそんなにホメるなら聴いてみないと……」と思ったしだい。

 Amazonのプライム・ミュージックに『シャドー・シアター』『モックルート』の2作が入っていたので、とりあえずその2枚を聴いてみたら、これがじつに素晴らしく、昨日からずっとへピロ。

 ジャズ・ピアニストといっても、いわゆるストレート・アヘッドなジャズではまったくない。

 スキャットを多用するあたりは、ペドロ・アズナールのスキャットが重要な位置を占めていた時期のパット・メセニー・グループを彷彿とさせる。「情景が見える」という感じの映像喚起力の強さや、全編を覆う“水彩画的リリシズム”も、PMGぽい。

 また、アルメニア出身らしい民族音楽的エキゾティズム(もっとも、私はアルメニアの音楽がどんなものだか知らないが)が、常にスパイス的に曲を彩っている。その点では誰にも似ていない。
 ジャズの世界にはキルギス出身のエルダー・ジャンギロフというピアニストもいて、私はこの人もお気に入りだが、エルダーよりももっと、自分のルーツが音楽に大きく投影されている感じ。

■関連エントリ→ エルダー・ジャンギロフ『エルダー』

 曲によってはエマーソン、レイク&パーマー的、プログレッシヴ・ロック的な激しさもある(そのへんは上原ひろみっぽい)。
 かと思えば、生ピアノのみの曲には、グレン・グールドが弾くバッハのような静謐さとユーモアもある。じつに多彩で、万華鏡のような音楽。

 『シャドー・シアター』も『モックルート』も素晴らしいが、どちらかといえば『シャドー・シアター』のほうが傑作かな。

 久々に自分の心の琴線に触れまくりの、大当たりのアーティストに出合った思い。昨年出た最新アルバム『太古の観察者(An Ancient Observer)』を買うことにする。


↑『シャドー・シアター』所収の「エリシュタ」。聴いたこともないような斬新さと、不思議な懐かしさを兼備した絶品。


↑『シャドー・シアター』のオープニング曲「ザ・ポエト」。やみつきになる魅力がある。


↑これも『シャドー・シアター』所収の「ラメント」(哀悼)。なんと美しい曲だろう。自分の葬儀に流したい。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
29位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
21位
アクセスランキングを見る>>