『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』



 『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』をDVDで観た。



 永井豪原作の1970年代のロボットアニメ『鋼鉄ジーグ』をモチーフにしながらも、『パシフィック・リム』のようなロボット・アクションではなく、街のチンピラたちが闘うクライム・アクションだという、ヒネリの利いたイタリア映画。

 「フランスでは『グレンダイザー』(やはり永井豪原作のロボットアニメ)が放映されて大人気」という話は私が子どものころによく聞いたが、イタリアでは『鋼鉄ジーグ』のほうが人気だったようだ。
 なんにせよ、やはり永井豪は偉大なマンガ家だし、日本のアニメの影響力はやはりすごい。

 「皆はこう呼んだ~」って、ヘンなタイトルだなァと思ったら、これは日本語で言う「人呼んで~」のことなのだね。
 それを「人呼んで」とせず、あえて“直訳調”のタイトルにするあたり、ヒネったセンスがなかなか。

 主人公はコソ泥をくり返す街のチンピラ、エンツォ。彼が警察に追われて河に飛び込んだら、そこに不法投棄されていた放射性廃棄物を全身に浴びたことで、なぜか不死身の身体になってしまう……という、なんともゆる~い設定のヒーロー・アクション。
 しかも、エンツォは当初、そのスーパーパワーを正義のために用いず、ATMを機械ごと盗むような犯罪に用いてしまう。

 だが、不幸な生い立ちの娘・アレッシアと出合ったことから、エンツォは自らの力を悪との闘いに用いることを決意する。
 アレッシアは幼少期に受けた性的虐待で深く心を病み、軽度知的障害でもあるらしい。そして、アニメ『鋼鉄ジーグ』の世界を現実と信じ、『鋼鉄ジーグ』のDVDを心の支えに生きている。彼女はエンツォのパワーを目の当たりにして、彼を『鋼鉄ジーグ』のごときヒーローと信じるのだった。

 アレッシアのヒロイン像は、明らかにフェリー二の『道』のジェルソミーナを下敷きにしている。無知ゆえの無垢に貫かれた聖女としてのヒロインなのだ。
 そして、エンツォが闘う敵となるマフィアのボス、ジンガロのサイコパス的キャラクターは、タランティーノの諸作を彷彿とさせる。
 フェリーニと永井豪とタランティーノの融合! なんとも濃ゆいエンタメである。

 ヒロインのエキセントリックなキャラゆえ、好悪の分かれる作品だと思うが、私はけっこう好きだ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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