深町秋生『ドッグ・メーカー』



 深町秋生著『ドッグ・メーカー:警視庁人事一課監察係 黒滝誠治』 (新潮文庫/907円)を読了。
 深町作品を読むのはこれで11冊目である。

 この人、最近はすっかり「警察小説の書き手」になってきた感がある。
 時代小説と並んで、警察小説というのもエンタメ分野の「ドル箱」なのだろう。
 Amazonの警察小説ジャンルを検索すると、名前も聞いたことのない作者が山ほどいて、ビックリする。私のような門外漢が想像するよりも、ずっと裾野が広いジャンルなのだ。

 警察小説の中でも「悪徳警官もの」というか、警察組織の腐敗に焦点を当てる作品が多いのが深町で、そうした偏りはいかにもこの人らしい。
 本作もしかり。警察内部の不祥事を摘発するためのセクション・警視庁人事一課(通称「ヒトイチ」)の監察係を主人公に、腐敗しきった警察官僚たちとの戦いを描いている。

 ……のだが、監察係である主人公・黒滝誠治も、悪を倒すためなら違法捜査も辞さないアブナイ刑事として設定されている。
 タイトルの「ドッグ・メーカー」とは、狙い定めた相手(警察官やその妻など)の弱みを握ることで、相手を意のままに操って捜査に利用する黒滝の汚いやり口(=自分のイヌにしてしまう)を意味している。

 GPS発信機や、パソコンのパスワードを自動解析するソフトを仕込んだUSBメモリ、ペン型の刺突用護身具「タクティカルペン」(『闇金ウシジマくん』によく出てくるヤツ)など、黒滝が違法捜査に用いるガジェットのたぐいも興味深く、スパイ小説的な面白さもある。

 深町作品には珍しく、エロ要素は皆無。グロ要素も控えめ。その点ではわりとおとなしい作品で、万人受けしそう。「もっと売れたい!」という作者の強い意志が感じ取れる。

 初期作品のキワドイ感じが薄れてきた分、初期からのファンには物足りないかもしれない。が、私はこれまで読んだ深町作品のうちでも上位に位置すると感じた。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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