矢野顕子『Soft Landing』



 矢野顕子のニューアルバム『Soft Landing』(ビクターエンタテインメント/3240円)をゲットし、ヘビロ中。
 『SUPER FOLK SONG』からつづくピアノ弾き語りシリーズの、7年ぶり5作目となるアルバム。



 『SUPER FOLK SONG』から25年目というのは「まあ、そんなもんだろ」という感じだが、シリーズ前作『音楽堂』から7年も経っていたことにビックリ。「年を取るごとに、時間が早く進むように感じる」というのはホントだな。

■関連エントリ→ 矢野顕子『音楽堂』

 私はシリーズの過去4作もそれぞれ大好きだが、この新作も期待を裏切らない仕上がり。
 なつかしさとあたたかさと寂寥感が黄金比を保ってせめぎ合う、唯一無二のピアノとヴォーカルが堪能できる。

 フジファブリックの「Bye Bye」、YUKIの「汽車に乗って」のカバーがとくによい。
 「Bye Bye」は志村正彦がPUFFYに提供した楽曲のセルフカバーだが、志村の突然の死のあとで発表されたアルバム『MUSIC』に収録されたことで、特別な意味合いを帯びた曲。

 「汽車に乗って」は、YUKIのシングルの中ではわりと目立たない曲(アルバム『うれしくって抱きあうよ』に収録)だろう。
 このへんのちょっとヒネった選曲センスは、相変わらずさすが。「ううむ、このアーティストの曲でそれを選びますか」と唸る。

 バート・バカラックのカバー「Wives and Lovers」における、エレガントかつパワフルなピアノも素晴らしい。
 また、糸井重里作詞・矢野顕子作曲という「黄金コンビ」によるオリジナル曲が今回は3曲あるが、その中では「野球が好きだ」がポップでよい。かつての「行け柳田」を彷彿とさせるベースボール讃歌である。
 
 神奈川県立相模湖交流センターの多目的ホールでレコーディングされたそうで、音に自然な広がりがある。
 盟友エンジニア・吉野金次(本作には「監修」という形で関わっている)のすすめでドイツピアノ「ベヒシュタイン」が初めて使われたそうだが、正直、私にはピアノの音の違いまではわからなかった。

 初回限定盤特典のDVDには貴重なライヴ映像が満載のようだが、価格が通常盤の倍もするので買わなかった。「特典」はあくまでオマケなのだから、もう少し安くしてくれればいいのに……。

 ジャケットのイラストは、『モテキ』で知られるマンガ家・久保ミツロウの描き下ろし。これまでのアッコちゃんのアルバムにはなかったタイプのジャケで、いい感じだ。

 タイトルナンバーの「Soft Landing」は、NHKドラマ「ブランケット・キャッツ」の主題歌。私はドラマ未見だが、「Soft Landing」とは猫が高いところから飛びおりるときのフワっとした着地を指すようだ。



 このアルバム全体も、「猫のフワっとした着地」を思わせるやわらかさとしなやかさに満ちている。

 そういえば、シリーズ前作『音楽堂』のジャケは猫が飛ぶ写真(by岩合光昭)だった。前作で飛んで今作で着地するという、ファンにしかわからないひそかな「連続性」があるわけだ。



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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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