日食なつこ『鸚鵡(オウム)』



 日食なつこが9月に出した新作ミニアルバム『鸚鵡』(Living,Dining&kitchen Records/2160円)を、ようやくゲットしてヘビロ中。

 彼女は年頭にもミニアルバム『逆鱗マニア』を発表したから、2枚合わせてフルアルバム1枚分を今年出したことになる。

 『逆鱗マニア』もよかったが、この『鸚鵡』も素晴らしい。

 2015年末に発表された初のフルアルバム『逆光で見えない』が高く評価された彼女は、26歳にしてすでに鉄壁の個性を確立している。

■関連エントリ→ 日食なつこ『逆光で見えない』 

 椎名林檎と比較する向きもあるが、全然違うと思う(まあ、『逆鱗マニア』なんてタイトルはやや林檎風だが)。

 彼女の音楽は、生ピアノ弾き語りというスタイルながら、フォークでもポップスでもなく、ロック/ファンク/ソウル/ジャズのミクスチャーともいうべき硬派なもの。
 強い意志を感じさせる眼差しと凛としたヴォーカルは、一度その歌いぶりに触れたら心から離れない。

 何より素晴らしいのは、研ぎ澄まされた感性が光る独創的な歌詞だ。
 生きづらさを抱えた若者たちに寄り添い、彼らの背中を力強く押す歌詞。あるいは、日常性の中にも宇宙的スケールを感じさせる歌詞……言葉のセンスが、若手アーティストの中で突出している。

 この『鸚鵡』も、随所に胸に突き刺さるフレーズが登場する。

 日食なつこの曲のメインテーマとも言うべきもの――それは「生き急げ!」という呼びかけだ。
 もちろんテーマは一つではなく、いろんな曲があるのだが、聴く者に「生き急げ!」と呼びかけるような一連の曲が、抜きん出て素晴らしい。
 本作のリード曲になっている「レーテンシー」などは、まさにその典型。




 そりゃ待ってりゃいつかは来るさ痺れを切らした未来の方から
 待ってるだけしか能のない奴の面を拝みにさ



 ……なんてフレーズは、歌詞というよりも質の高い現代詩のようだ。
 傑作「黒い天球儀」の名フレーズ「いつか吐き出す最後の一呼吸が ためいきで終わってしまわないように」に匹敵する。

 日食なつこのツイッターで下のツイートを見たとき、アーティストとしての「核」の部分に触れた思いがした。



 「ああ、なるほど。こういう考え方で生きているからこそ、彼女の『生き急げ!』という呼びかけは深く心に響くのだな」と思った。

 チェ・ゲバラの名言――「明日死ぬとしたら、生き方が変わるのか? あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なのか」を思い出す。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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