八木澤高明『日本殺人巡礼』



 八木澤高明著『日本殺人巡礼』(亜紀書房/1836円)読了。

 著者は元『FRIDAY』の専属カメラマンで、現在は写真家・ノンフィクション作家。
 前に、この人の『娼婦たちから見た日本』という著書を読んだことがある。これはとてもよい本だった。

 本書は、亜紀書房のウェブマガジン「あき地」に連載された「殺人風土記 」に、加筆・改稿を加えたもの。元のウェブ連載はいまも読むことができる。

 過去の有名殺人事件の現場や犯人の故郷などを著者が旅して、当時を知る人、犯人の幼馴染みなどの話を聞いていく内容だ。
 つまり、犯罪ルポというよりも、“ルポ色も加味された事件紀行”という趣。

 部分的には面白いのだが、“犯人が生まれ育ったこの地域の風土が、犯罪の背景にある”みたいな決めつけが多くて、その点に違和感を感じた。

 たとえば第2章「北関東犯罪黙示録」では、埼玉愛犬家連続殺人事件や本庄保険金殺人事件などを、北関東で起きた事件として一括りにしている。写真週刊誌のカメラマン時代、現場に通った事件のうち、「記憶に残る事件の多くが、どういうわけか北関東に集中していた」のだそうである。

 そして、各章では犯人が生まれ育った地域の歴史が前近代まで遡って辿られ、その部分は歴史随筆のよう。
 犯罪と犯人が生まれ育った風土は、もちろん、まったく無関係ではないだろう。が、著者は両者を恣意的に結びつけすぎだと思う。中沢新一のオカルト本『アースダイバー』のような胡散臭さを感じてしまう。

 そのへんは感心しなかったが、本書にはよい点もある。
 たとえば、古いものでは80年前の事件(「津山三十二人殺し」)もあるなど、昔の事件が多いのに、犯人を知る人を探し当てて取材する著者の根気と勘のよさには感服した。

 また、著者は『娼婦たちから見た日本』においても、娼婦たちを「上から目線」で見ることなく寄り添う描き方をしていたが、そうした姿勢は本書にも通底している。

 私は殺人者を上から断罪するつもりで旅をはじめたわけではなく、もとよりその資格もない。
 なんで彼らが人を殺めたのか、その理由が知りたかった。(「はじめに」)



 それと、第4章「北海道に渡ったネパール人」だけは、他の章とは異質な本格的犯罪ルポになっている。
 日本人と結婚したネパール人男性が妻と幼子を殺した2008年の事件を扱ったもので、衝撃的な内容だ。この犯人のネパール人については、他の章に出てくる永山則夫や小原保などとは違って、一片の同情の余地もない。

 著者はネパール人女性と結婚していた時期があり、ネパールにも長く暮らした人物。被害女性の親友とも個人的に親しいことから、この事件を深く取材したのだという。
 そのような著者にしか書き得ない厚みのあるルポで、本書の中でこの4章のみは独立した価値を持っている。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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