宿野かほる『ルビンの壷が割れた』



 宿野かほる著『ルビンの壷が割れた』(新潮社)読了。

 8月下旬に発売予定の新刊を2週間限定で全文無料公開し、読者から本のキャッチコピーを公募するというユニークなキャンペーンで話題の作品。

 一気読みしてしまう程度には面白かった。覆面作家のデビュー作だそうだが、文章も展開も手慣れていて、「じつは現役の人気作家が変名で書いた」と言われても信じられる感じ。

 ヒロインは黒木華をイメージして書いたのかな。
 学生演劇の世界が舞台の一つになるのだが、黒木華は学生演劇のスターであったし、映像化するならピッタリだと思う。

 ただ、担当編集者の「ものすごく面白く、そして、ものすごく奇怪な小説でした。/あまりにすごいので、私はいまだ、この作品にふさわしいコピーを書けずにいます」という言葉は、大げさすぎ。

 この言葉から、人は「きわめて斬新な、常識はずれの手法で書かれた、これまでに読んだこともないような小説」を思い浮かべるだろう。
 私もそういう作品を期待して読んだ。しかし、斬新さはあまり感じられなかったし、べつに「奇怪な小説」でもなかった。むしろ、「湊かなえとか、沼田まほかるあたりが書きそうな小説だな」と思った。

 ネタバレになることは書けないが、最後のどんでん返しは無理がありすぎだと思う。ラストでズッコケた。
 あと、この作品だけで一冊にするには短すぎる気がした。紙書籍版は160ページと表記があるから、せいぜい中編程度の長さか。

 斬新さはないものの、よくできたエンタメではあると思う。
 このキャンペーンによって、「わりとよくできたエンタメ」が「ものすごく面白いエンタメ」に嵩上げされ、小型新人が大型新人に見えたとすれば、「大成功!」ということになるだろう。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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