高田かや『さよなら、カルト村。』



 高田かやの『さよなら、カルト村。――思春期から村を出るまで』(文藝春秋/1080円)を読んだ。

 昨年刊行され話題を呼んだ、著者の自伝的コミックエッセイ『カルト村で生まれました。』の続編。

 正編は著者の「初等部」(一般の小学生期)時代の思い出が中心だったが、本書は中等部・高等部時代と、その後村を離れるまでのいきさつが描かれている。

 「ヤマギシ会」(という名前は作中には出てこない)の「村」が舞台になってはいるが、告発調ではなく、淡々としたタッチで自分の思い出を振り返っている……という印象は正編と同一。

 著者の絵がシンプルでふんわりしているため、陰惨な感じはまったくないが、内容はけっこう衝撃的である。

 たとえば、中等部になると村の子たちは親元を離れて共同生活をさせられるのだが、その中等部の「禁止事項」として、「①音楽を聴くこと ②男女交際 ③一般の本を読むこと」が挙げられていたりする。
 これ自体が児童虐待、人権侵害だろう。

 ただ、主人公(=少女時代の著者)ら子どもたちが、がんじがらめの規則の中でつつましいオシャレをしたり、大人の目を盗んで「一般の子」と同じ行動をしたりする様子が、随所で描かれる。そのことに、読んでいて救われる思いがした。

 村では基本、身だしなみ以上のおしゃれは禁止で、ヘアスプレーやワックスなどの整髪料はいっさいなく、唯一男子が近くに来る夕食前のお風呂上がりには、ワックス代わりにニベアをつけていた。(中略)
 学校で一般の子が使っているような本物のヘアスプレーが欲しかった。



 ……などという一節は、いじらしくて胸を衝かれる思いがする。

 終盤では、「地下鉄サリン事件」によってヤマギシ会もオウム真理教と同一視されて世の批判を浴びたり、学校法人を作ろうとしたりする変化が描かれる。
 その変化の中で社会との軋轢を経験し、村は少しずつ社会に向けて開かれていくのだ。

 19歳になった著者は、村の「理想」に疑問を持ち、一般社会で生きていくことを決意する。
 そのことで両親(も会員だった)や会と衝突する修羅場が描かれるのかと思いきや、村を出るまでのいきさつは意外なほどあっさりしている。

 「こんなにすんなり脱出できるのなら、カルトとは言えないのでは?」とも思ったが、それもまた、サリン事件以後のヤマギシ会の変化の賜物なのかもしれない。

 正編を読んで面白かった人なら、本書も面白く読めるだろう。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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