ジム・レーヤーほか『メンタル・タフネス――成功と幸せのための4つのエネルギー管理術』



 ジム・レーヤー、トニー・シュワルツ著、青島淑子訳『メンタル・タフネス――成功と幸せのための4つのエネルギー管理術』 (CCCメディアハウス)読了。

 これも例によって、Kindle日替わりセールで安かったので買ってみたもの(いまは定価に戻っている)。
 ジム・レーヤーはスポーツ心理学の権威で、多くの一流アスリートのメンタル・トレーニングを指導してきた人。メンタル・タフネスについての著書も多い。
 著者の知見・経験を、スポーツのみならずビジネス万般にブレイクダウンして開陳したのが、本書である。

 「メンタル・タフネス」という言葉の印象から、「戦士のような暮らしをして心をガンガン鍛え、何事にも動じない鋼のメンタルに変える方法が書かれているのだな」と思い込む人も多いだろう。
 実際に読んでみればそうではなく、むしろ著者は心の休息の大切さをくり返し訴えている。ただしそれは、「頑張らなくてもいいんだよ」的な角度ではない。“心を鍛えるためには、休息してエネルギーを蓄えることが不可欠のプロセスである”との主張なのだ。

 筋トレをする場合、筋肉に負荷をかけてトレーニングしたあと、休息をとって「超回復」を促すことが重要なのは、多くの人が知っているだろう。著者は、この「超回復理論」をメンタル・トレーニングに援用している。
 つまり、著者は“休息の時間を日常の中にきちんと組み込まないと、強くなれない”と捉える立場なのだ。

 この主張は、私にはけっこう目からウロコだった。
 私にとって「休息」のイメージは、「たまには入れないと心が折れてしまうから、仕方なく週に一度くらい入れるもの」だった。それに対し、著者は毎日の生活の中に休息をきちんと位置づけ、「エネルギーの消費と回復のバランス」を取ることが、適切な「エネルギー管理」のために何よりも重要だと言うのである。

 行動するにはエネルギーが必要だ。そして、じっとしてエネルギーを消費しないより、エネルギーを消費してから回復するほうが効果的なのである。



 エネルギーの消費ばかりが進み、適切な回復をしないと、燃え尽きたり、活動が続けられなくなったりする。回復ばかりに重点を置いて、適度なストレスが与えられないと、退化や衰えを招くことになる。



 ……などという著者の考え方は、大げさに言えば「休息観の革命」だ。
 元本は2004年に出たものだが、いまの「働き方改革」を考えるうえでも、著者の休息観は示唆に富んでいると思う。

 読みながらしばしば思い浮かべたのは、私のお気に入り本の一つ、ロイ・バウマイスターの『WILLPOWER 意志力の科学』だ。
 
 バウマイスターが「意志力」と呼んでいるものを、レーヤーは「エネルギー」と呼んでいる。
 意志力・エネルギーが、筋力と同じように「トレーニングで鍛えられる」と考えている点、また、「限りある資源だからこそ、大事に管理して使わないといけない」と考えている点で、両者の認識は一致している。

 2冊を併読すると、いっそう有益だと思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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