深町秋生『探偵は女手ひとつ』



 深町秋生著『探偵は女手ひとつ』(光文社/1620円)読了。

 30代後半でシングルマザーの私立探偵、椎名留美を主人公にした短編連作。本書には6編が収められている。
 作者の地元・山形を舞台にしており、飛びかう山形弁がいい味出してる。

 探偵の仕事がしょっちゅうあるわけではないため、留美は半ば「便利屋」と化している。さくらんぼの収穫手伝いや雪かき、パチンコ屋の開店待ち並び代行など、なんでもやって自分と娘の生活費を稼ぐのだ。そうした設定がリアルでよい。山形あたりには、現実にもそんな探偵がいそうな気がする。

 「便利屋」的仕事の合間に探偵としての調査依頼がきたり、「便利屋」仕事が縁となって探偵仕事が派生したりする……という感じのストーリー展開である。

 留美は元刑事で、やはり刑事であった夫が殉職したことから、生活のために探偵を始めたという設定になっている。
 夫を亡くした女刑事というと、深町の「組織犯罪対策課八神瑛子シリーズ」を思い出すが、本作はあのシリーズほどハードタッチではなく、もっとほのぼのとしている。

 各編とも、ラストには事件の謎解きがなされるミステリ仕立て。ただし、ハードボイルド系の小説だから、謎解きの面白さは主眼になっていない。

 本作の価値はむしろ、登場する人々の生活が確かなリアリティで描かれている点にある。
 さくらんぼ農家の苦労、雪かきの大変さ、スーパーで万引きする独居老人の孤独etc……。ハードボイルド小説としては例外的なほど、濃密な生活感が全編に満ちているのだ。

 深町秋生作品にしては薄味な気もするが、そこそこ楽しめるし、連続テレビドラマにしてもいい気がする(話が地味なので映画には向かないだろう)。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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