『きみはいい子』



 薬師丸ひろ子主演の大ヒット映画を橋本環奈主演でリメイク(正確には原作の赤川次郎による続編の映画化)した『セーラー服と機関銃-卒業-』がAmazonプライムビデオに入っていたので、観てみた。



 が、あまりのクズ映画ぶりに耐えられず、15分で観るのをやめた。演技は学芸会、演出は拙劣、セリフはいちいちわざとらしい……とてもじゃないが、最後までつきあう気が起きなかった。

 私は少年時代に薬師丸ひろ子の大ファンであったから、『セーラー服と機関銃』には強い思い入れがあるのだ。相米慎二監督のオリジナルは封切り日に観たし、翌年に公開された「完璧版」(ディレクターズカット版)も封切り日に観た。
 「角川映画40周年記念作品」だか何だか知らないが、名作を汚さないでほしいものである。

 で、口直しにまともな映画が観たいと思い、やはりAmazonプライムビデオに最近入った『きみはいい子』を観た。
 中脇初枝の同名小説(短編連作)を、呉美保監督が映画化した作品。



 これはじつによい映画だった。呉美保は前作『そこのみにて光輝く』も素晴らしかったが、本作でも抜群の演出力を発揮している。

■関連エントリ→ 『そこのみにて光輝く』

 たくさんの子どもたちが出てくる映画なのだが、その誰もが素晴らしく自然な演技を見せる。監督の演出手腕の賜物であろう。

 親に虐待を受けて育った若い母親による「虐待の連鎖」、貧困家庭のネグレクト、いじめ、学級崩壊など、いまどきの子どもたちをめぐる問題がてんこ盛りで描かれた群像劇である。
 というと、「多くの問題を一本の映画に詰め込みすぎではないか」と思う向きもあろうが、実際に観てみれば、ストーリーの流れがとても自然なので、詰め込みすぎという印象はまったくない。

 尾野真千子や池脇千鶴、そして主人公の新米教師役の高良健吾などが、それぞれ熱演。
 とくに、虐待する母を鬼気迫る迫力で演じた尾野真千子がすごい。たんなる鬼母ではなく、「虐待したくないのに虐待してしまう」苦しさ・悲しさ・焦燥までも見事に表現しているのだ。

 途中、見るのがつらい場面もあるが、ラストではそれぞれの登場人物に一条の希望の光が射す。
 人が人を抱きしめること――とくに、親が幼い我が子を抱きしめること――がもたらす価値を、静かに美しくリフレインする映画。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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