大村憲司『外人天国~GAIJIN HEAVEN~』



 大村憲司の1983年のソロアルバム『外人天国~GAIJIN HEAVEN~』を、中古で購入してヘビロ中。

 このアルバムは発売当時、NHK-FM「サウンドストリート」の坂本龍一の担当回で特集された。それを私はリアルタイムで聴き、オープニング・ナンバー「SLEEP SONG」のカッコよさに強烈な印象を受けた。が、お金のない少年時代だったので、アルバムは買わなかった。

 ……のだが、そのときの「サウンドストリート」の音源がYouTubeに丸ごとアップされており(↓)、懐かしさのあまり聴いてみて、やっぱりカッコよかったのでアルバムをポチったのである。



 考えてみれば、大村憲司は生前に4枚しかソロアルバムを出しておらず、この『外人天国』は最後のアルバムである。

 最初の2枚はもろフュージョン。3枚目の『春がいっぱい』は、YMOの影響(大村はYMOの2度目のワールドツアーにギタリストとして参加)丸見えのテクノポップだった。
 この『外人天国』はどちらでもない。フュージョンもYMO的要素も消化したうえで、大村憲司にしか作り得ない、ハイクオリティな大人のロックになっているのだ。

 「サウンドストリート」の中で大村自身は、「(今回のアルバムは)AORですね」と言っている。
 たしかに、スティーリー・ダンの「リキの電話番号」のカヴァーが入っていたりして、広い意味ではAORなのだが、一般的なAORのような甘ったるさはなく、じつに渋く、しかもエッジの効いたサウンドだ。
 大村憲司の作品ではあまり目立たないアルバムだが、つまらない曲など一つもないし、むしろソロの中では最高傑作ではないか。

 大村のギターが素晴らしいのは当然のこととして、彼のヴォーカルも意外によい。けっしてうまくはないが、味がある。
 「リキの電話番号」のカヴァーも、ロバート・ワイアットの「アット・ラスト・アイ・アム・フリー」のカヴァーもよい。歌詞はすべて英語なのだが、日本のアーティストだとは思えないほどさまになっている(全10曲中、4曲はインスト)。

 『春がいっぱい』は、テクノポップ・ブーム真っ只中に出ただけに、いま聴くと古臭く感じる。対照的に、この『外人天国』は、発表から34年経ったいまでも古びていない。日本ロック史の隠れた名盤だと思う。


↑「リキの電話番号(Rikki Don't Lose That Number)」。吉田美奈子がバックグラウンド・ヴォーカルを務めていたりと、豪華な布陣の絶品カヴァー。間奏のギターのカッコいいこと。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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