鳫咲子『子どもの貧困と教育機会の不平等』



 鳫咲子(がん・さきこ)著『子どもの貧困と教育機会の不平等――就学援助・学校給食・母子家庭をめぐって』(明石書店/1890円)読了。

 元参議院事務局職員で、現在は跡見学園女子大学准教授の著者が、自らも関わりをもった「子どもの貧困対策法」などをふまえ、日本の子どもの貧困状況を教育問題に的を絞ってまとめたもの。

 図表やデータが多数駆使されているが、子どもたちを思う「熱さ」が根底にあるため、白書的な無味乾燥には陥っていない。

 貧困家庭ではないのに子どもの給食費を払わない親がいる、という話が一時期マスコミを賑わせた。しかし、本書のデータを見れば、給食費未納はまぎれもない貧困問題であって、払えるのに払えない親はごく一部だとわかる。

 これは、生活保護バッシングの構図とよく似ている。
 不正受給や、生活保護費をパチンコですってしまう者などはごく一部であるのに、そちらが多数派であるかのような印象操作がなされ、いたずらに偏見が助長される構図と、である。

 給食費未納や就学援助の現状、母子家庭の母親のパートタイム労働の過酷な現状などを通して、深刻化する子どもの貧困、教育機会の不平等が鮮やかに浮き彫りにされていく。

 1997年の時点では母子家庭の母親の約7割が正社員であったのに対し、2007年には正社員の割合が半減した……などという具体的データの積み重ねに、強い説得力がある。

 近著『野心のすすめ』で、「いまの世の中で教育をロクに受けていない人というのは、単に努力しない人だとみんなわかっているから、ちゃんとした男の人は高校中退の女の人にはまず近寄りません」などとフザケたことを書いた林真理子に、本書を送りつけて読ませてやりたくなった。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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